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リーダーシップに正解はない 〜リーダーシップとフォロワーシップ〜

リーダーシップに正解はない 〜リーダーシップとフォロワーシップ〜

「あなたはリーダーですか?」

「あなたはリーダーですか?」
先日、こんな質問をとある学生団体の皆さんに聞きました。
すると「はい」と答えたのは85人中9人。「自分はリーダーだ」と思っている人は約10.5%という結果でした。

では、「リーダーシップ」とは何でしょう?先ほどのアンケートの中で「リーダーシップ」に関するイメージも聞いてみました。

 

・それぞれに適した仕事を振り分け、チームを効率よく引っ張っていく人
・特定の人だけが持つ才能
・大勢の意見をうまく引き出し、その意見を聞いた上で全員が納得する意見に導くのがリーダー
・目標や計画を立てて指導し、先導する。成果・生産性を向上させるための能力と、チームの人間関係を強化・維持する能力が必要
・周囲を一番に考え、正しく導くカリスマ性のある人

 

みなさんの頭の中にも同じようなイメージが浮かんだでしょうか。
でも、もしこれがリーダーの絶対条件というのなら、リーダーとして活躍できる人はごく一部の限られた実力者のみということになりそうです。

リーダーはカリスマ性がないといけないのでしょうか?必ずしもメンバーを引っ張らないといけないのでしょうか?

私たちはリーダーは誰でもなることができると信じています。
確かに強烈なカリスマ性を持ったリーダーもいます。的確に方向性を定め、強い牽引力で周囲をリードし、次々と目に見える成果を出していく。そういったリーダーが目立ちやすいのも事実です。しかし、主体的にフォローすることでメンバーを支えるフォロワーシップを得意とするリーダーがいてもいいのではないでしょうか。

フォロワーシップとは?

「フォロワーシップ 」とはその名の通り「支える、助ける」ことで周囲をフォローすることです。メンバーを力強く牽引し、導くことがリーダーシップであるなら、メンバーが自ら考え、行動できるような機会を提供したり、環境を整えることがフォロワーシップです。

フォロワーシップはフォロワーの役割でしょ?と思う方もいるかもしれません。しかし、フォロワーシップこそこれからのリーダーに身につけてほしい役割です。

「決められたことを正しくやる」ことが勝ちパターンの組織であれば、トップダウン型のリーダーシップが機能するでしょう。しかし、これからのますます正解がわからない社会においては、明確な指示で勝ちパターンに導くリーダーシップだけでなく、メンバーに主体的に考えさせ、自分たちで答えを導き出すサポートをするフォロワーシップが必要とされます。

フォロワーシップに大事なのはYETMINDです。YETMINDとは、相手の成長を信じ、可能性を諦めないこと。リーダーがメンバーの成長の機会を奪ってはいけません。例えメンバーの成長に手を焼いたとしても、失敗することが目に見えていたとしても、「今はこういう状況だけど、必ず成長できるはず」と心から信じて向き合うことが大切です。ついつい手を出したくなる状況でも、相手を信じ、任せる。あくまでも自分はフォローに回ることでメンバーの主体的な行動をサポートします。

さらに、フォロワーシップには日頃の「観察・傾聴・承認」が重要です。普段からメンバーをよく見て、話を聞いて、認めること。シンプルですが、とても大切なことです。対話の中で、相手の話をよく聞き、単純に褒めるのではなく承認してあげることで、フォロワーシップは磨かれていきます。

引っ張るタイプのリーダーシップは目に見えやすいため、他者からも称賛されることが多い一方、フォロワーシップは目に見えづらいため、表立って認められることはあまり多くありません。
しかし、強烈なカリスマ性で周囲を率いるリーダーこそ、実は見えないところでフォロワーシップも十分に発揮しています。メンバーを指導し、導くリーダーシップの裏では、日頃の丁寧な観察、そして一対一の対話など細かなコミュニケーションによるフォロワーシップがあるのです。

リーダーシップとフォロワーシップを使い分ける

チームボックスの代表・中竹竜二がフォロワーシップを提言し始めてから約10年、フォロワーシップという言葉も広く知られるようになりました。
しかし、改めてみなさんにお伝えしたいのは、リーダーシップもフォロワーシップも、リーダーだけが大事にすべきものではないということです。

リーダーが実践するリーダーシップ、フォロワーシップもあれば、フォロワーが実践するリーダーシップ、フォロワーシップもあります。

 

1. リーダーによるリーダーシップ
2. リーダーによるフォロワーシップ
3. フォロワーによるリーダーシップ
4. フォロワーによるフォロワーシップ

 

リーダーだからリーダーシップを発揮しないといけないとか、フォロワーはリーダーシップを発揮すべきではないとか、そんなことはありません。重要なのは、「今自分はどちらの行為を発揮すべきか」を意識し、状況に応じて使い分けることです。

自分がいちフォロワーとして参加しているプロジェクトで、リーダーシップを発揮する場面もあるでしょう。もちろん、フォロワーとしてリーダーをフォローする場面もあります。

フォロワーとしてのフォロワーシップ

リーダーの発揮すべきリーダーシップ・フォロワーシップの重要性は説かれることが多い一方、フォロワーが組織においてどのように力を発揮すべきかという点についてはあまり言及されることがありません。しかし、強い組織であるほど、フォロワーの存在は重要なのです。

一般的に、リーダーには「責任」が伴いますが、リーダーでもフォロワーでも「責任感」を持つことはとても重要です。そのためにはそれぞれが自身の役割、存在意義をしっかりと認識することです。いくらリーダーが強烈なリーダーシップを持って組織を率いていても、フォロワー自身にフォローの姿勢がなければ組織は成り立ちません。

リーダーのフォロワーシップが、フォロワーに主体的に考え、行動させる環境を整えることであれば、フォロワーのフォロワーシップは、その環境で自分の役割をしっかりと理解し、全うすることです。自分の行動一つ一つに意味があり、それが組織を支えていると自覚することで、フォロワーとして責任感を持って行動します。

リーダーだから偉いとか、フォロワーだからリーダーに従うのは当たり前だとか、そんなことは一切ありません。本当に強い組織は、それぞれが自分の役割を認識し、責任感を持ってお互いに支え合っている組織です。

自分らしいリーダーになる

リーダーシップもフォロワーシップも決して難しいことではなく、日常の中にも発揮できるチャンスはたくさんあります。組織やチームに属していなくても、家庭で、友人とのグループで、もしくは自分自身をリードし、フォローする場面もあるかもしれません。

リーダーのスタイルは様々です。多様性が尊重されるこの時代に、リーダーシップの形もまた多様化しています。グイグイ引っ張るリーダーシップが得意なリーダーもいれば、見えないところでメンバーを支えるフォロワーシップが得意なリーダーもいるでしょう。

リーダーシップに正解はありません。だからこそ「自分らしいリーダーのスタイル」を見つけてみてはどうでしょうか?

リーダーシップもフォロワーシップも他者の巻き込みが重要です。人間の成長には他者の支援が必要不可欠です。一人で全て完結できることも素晴らしいですが、周囲を巻き込み、支え合い・助け合いながら物事を進めていくことで、人は成長します。

リーダーとは単なる「役割」に過ぎません。リーダーという「役職」についていても、そうでなくても、組織の一人ひとりが責任感を持ち、自分らしいスタイルで組織を支えていれば、その組織は必ず強くなるでしょう。

 

株式会社チームボックス 代表取締役
中竹 竜二
福岡県生まれ。早稲田大学卒業、レスター大学大学院修了。三菱総合研究所を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督就任。自律支援型の指導法で大学選手権二連覇を果たす。2010年、日本ラグビーフットボール協会 、指導者を指導する立場である初代コーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチを経て、2016年には日本代表ヘッドコーチ代行も兼務。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、一般社団法人スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。著書に『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』(ダイヤモンド社)など多数。
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