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あなたは恥をかいてでも学べますか?ー「大人の学び」を学ぶ(前編)

あなたは恥をかいてでも学べますか?ー「大人の学び」を学ぶ(前編)

「そんなことも知らないの?」

グサっとくる一言。
もし、あなたがこの言葉を言われたら、どう感じますか?

恥ずかしい。イライラ。おおよそこの2パターンでしょうか。大人がなにか学ぶとき、多くは「恥」の感情が付いてまわります。そんなことも知らない自分の無知さ、プライド、自信のなさ。子どもが学ぶとき、大抵の場合「知らない」ことが前提にあります。でも、大人が学ぶとき、「知らない」ことは「恥」であるという思い込みが学びの邪魔をします。

失敗することを恐れて挑戦できない、知らないことを恥じるがために知ったかぶりをしてしまう。わかったふりをして、その場しのぎをする。その代わりに、自分の得意なことばかりやってみて、自分を大きく見せようとする。

これ、すごくもったいないです。
恥の意識に感情を支配されてしまうと、人は素直に学ぶことができません。そして「自分はできている」「自分はわかっている」と勘違いしたまま、そこから学ぶことをやめてしまいます。

大人の学びのスタートは「恥の意識を捨てること」です。
「そんなことも知らないの?」と言われた時に「チャンス!」と思えるかどうか。これが大人の成長を左右します。恥をかいてでも学ぼうと思える人だけが、成長できるのです。

余談ですが、わたし自身はもっと歌が上手くなりたい!と思ってボイトレに通っています。そこで、発声の練習として、口を大きく開けて、目をかっ開いて、これが自分だと信じたくないくらいの変顔をしながら鏡と向き合っているのですが、これも学びを得るために捨てなくてはならない恥だと思って取り組んでいます🤣

「大人の学びは痛みを伴う」

社会学者ジャック・メジローの言葉です。
大人は、すでにこれまでの知識や経験から基づく自身の思想や哲学を持っています。その状態から自身と異なる考えや、知らなかったアイデアを取り入れるとき、腹落ちしない違和感や、反論したくなるようなストレスを感じることがあるでしょう。それを「痛み」とも表現しますが、それがまさに「学び」なのです。
そして、このとき重要なのが「アンラーン」です。

アンラーン(Unlearn) = 学びほぐし

「アンラーン」という言葉、どのようなイメージを持ちますか?

学ばない?学ぶことを否定する?
アンラーンは「学ぶ」という意味の “Learn” に否定を示す “Un” がついていますが、「学ばない」ということではありません。「学んだことを一旦リセットし、新たに学び直す」というような意味合いです。自分がすでに持っている知識や過去の経験、価値観や常識などにとらわれず、純粋な好奇心で素直に学ぶ。プライドや恥の意識に邪魔をされずに、なんでも吸収しようとする姿勢が大人の学びには重要です。

基本的に、人間の脳は心地よさを求める習性があります。自分と違う意見や、知らないことを吸収するとき、脳には大きなストレスがかかります。しかし、放っておくとサボりがちな脳を甘やかさないためにも、自ら痛みを伴って学ぶことが大人が成長する過程では大事なのです。

大人に比べ、子どもは驚くほど多くのことを吸収し、学びます。
失敗するのが当たり前、知らないことは素直に知らないと言える、プライドもない。恥や痛みを、それと感じずに純粋な好奇心だけで学ぶことのできる子どもに、あなたの「学びレベル」は負けていませんか?
学ぶためには失敗したっていい。常にアンラーンし、学び続けられる人でありたいものです。

学びの原則

ところで、ここでちょっとした問題を出します。
今から出す単語を60秒以内でできるだけ多く覚えてください。

あかね じけん みつば ゆうき おつげ
ほうじ さつき やたい からす さっし
ひたい こごと けなげ みぢか とびら
くうき よなか くもり さんま ほんき
みなと どいつ すうじ まくら まつげ
べると うなじ といれ ねむけ がらす
もんく さくら はなび けむし こおり
あいす けいと こんび ばいく まいく

さて、覚えられましたか?
実はここでは覚えることが目的ではありませんでした。今あなたが単語を覚えようとしたとき、どんなふうに覚えようとしましたか?

ひたすら頭の中で文字をなぞった、声に出して読んでみた、ペンで紙に書いてみた、粘土で形を作ってみた (!?) etc…いろいろな方法があったかと思います。どれが正しい覚え方かの正解があるわけではありません。

ですが、人が何かを学ぼうとするとき、アウトプットは学びをより促進します。今回であれば、頭の中で黙読することも間違いではないのですが、それよりも、声に出す方が記憶に残るはずです。

例えば、よくありがちなのが、何十冊・何百冊と自己啓発本を読んだとしても、実際に行動しないと自分自身は何も変わらないですよね。これはただ「わかる」状態を作っただけで、自分で「できる」状態までにはなっていません。ダイエットの知識をたくさんインプットして取り入れたとしても、それをアウトプットして実行に移さなくては、痩せません。
セミナーも同じです。コロナ禍でたくさんのウェビナーに気軽に参加できるようになりましたが、10回ウェビナーに参加するよりも、自分自身で学んだことを元に1回でもウェビナーを開催した方が、おそらく何十倍も力になります。

このように、学びは 「インプットよりアウトプット」がポイントです。「インプット=聞く、見る、教わる」だけでなく、積極的に「アウトプット=言う、やる、教える」をしていきましょう。
もちろん、良質なインプットがないとアウトプットはできないので、インプットも続けていきましょう。

失敗から学ぶ

学びの原則は他にもあります。それは「成功体験より失敗体験」です。
初めてのことや今までより難易度の高いことにチャレンジするとき、失敗はつきものです。

最近、公園などで子どもが乗っている姿をよく見かけるんですが、ブレイブボード、ご存知ですか?

ブレイブボード

これね、すっごい難しいんです。一回じゃ絶対乗りこなせないんですよ。
でも、これに乗りたい!という目標があるとしたら、何度も失敗を繰り返しながら、コツを覚えていきますよね。一度失敗すると、次はどうしようか?何を変えればもっとうまくいくだろうか?と考えます。この「思考する」という行為が学びの質を高めます。

もちろん成功も大事です。成功体験は自己肯定感を高めます。「できた!」という体験が、自分に自信を持たせ、次のチャレンジへと導きます。
一方、学びという視点で見ると、成功体験より失敗体験の方が重要です。
チームボックスの代表である中竹竜二は、ラグビーをはじめとするスポーツ界において「コーチのコーチ」という立場にいますが、「良いコーチは失敗をデザインする」といいます。スポーツにおいて、本番は試合です。本番で最大の力を発揮するために、練習でどれだけ失敗できるか。わざと難しい環境を作り出し、そこで探究心や競争心を生み出します。練習の段階で失敗に気づき、成功へのアプローチを導き出す。こうして学びを深めていきます。

振り返って復習する

失敗体験は必要ですが、もちろんただ失敗するだけでは意味がありません。
先ほど書いたように、失敗からいかに学ぶか。それが重要です。

例えば先ほどのブレイブボード。一度乗れたらどんどん新しい技にチャレンジしたくなりますよね。乗れるようになってすぐ、次の技を習得しようと、やり方を説明した動画などで研究するかもしれません。

でもこれも、先ほどの「インプットよりアウトプット」の原則通り、ただ動画を見ているだけでは技は身につきません。そして、もっと上手くなるためには、実は次々に新しいチャレンジに手を出すより、基礎をしっかりと復習する方が、学びの効果は高まります。

人は物事を振り返るときに成長します。同じことを何度も復習し、何が良かったのか何が悪かったのかをじっくりと考える。その過程で人は成長するのです。ラグビーの日本代表選手が、パスの練習を止めることがあるでしょうか?どんなに得意でも、どんなに慣れていても、選手を続ける限りパスの練習は止めることはありません。自分のパスを振り返り、分析することで技術を向上させます。

あなたは、ラグビーのボールを実際に投げたことがありますか?あのボールを正確に投げることは、実は簡単ではないのです。ただ投げているだけではなく、回転させながら投げているんですね。正確に投げられるようになる前に、どれだけ遠くに飛ばすかにチャレンジしても、上手くいかないでしょう。まずは復習し、振り返る。つまり、学ぶときには「予習より復習」が大事なのです。

次回へ続く・・・

ここまでは、学びに必要な「学びの三大原則」についてお話ししました!
次回は学びに必要な姿勢、そしてチームボックスが考えるリーダーとは?についてお話ししたいと思います!リーダーって、実は役職ではなく、誰でもなれるものなんですよ🙂

株式会社チームボックス 代表取締役
中竹 竜二
福岡県生まれ。早稲田大学卒業、レスター大学大学院修了。三菱総合研究所を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督就任。自律支援型の指導法で大学選手権二連覇を果たす。2010年、日本ラグビーフットボール協会 、指導者を指導する立場である初代コーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチを経て、2016年には日本代表ヘッドコーチ代行も兼務。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、一般社団法人スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。著書に『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』(ダイヤモンド社)など多数。
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