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仕事と人生を劇的に変える自己認識の力とは? 「insight(インサイト)」出版記念トークイベント

仕事と人生を劇的に変える自己認識の力とは? 「insight(インサイト)」出版記念トークイベント

イベントレポート 2019.07.22

仕事と人生を劇的に変える自己認識の力とは? 「insight(インサイト)」出版記念トークイベント

人は自分自身をどれほど知っているのか。そして、どれほど自分に向き合えているのか――。

そうした“自己認識”の重要性をわかりやすく実践的に説いた書籍が、2019年6月に日本でも出版された。組織心理学者のターシャ・ユーリックの著書である「insight(インサイト)――いまの自分を正しく知り、仕事と人生を劇的に変える自己認識の力」だ。

出版記念トークイベントである “「insight(インサイト)」発売記念 –あなたの仕事と人生を劇的に変える自己認識の力とは” が、株式会社チームボックス主催、英治出版の協力で開催された。

イベント前半では、本著の監訳を務めた株式会社チームボックス代表取締役・中竹竜二が、自己認識とは何かについて講演。後半では、現在ソニーコンピュータサイエンス研究所にて美の研究を進めているナターリア・ポリュリャーフ氏を迎えて、中竹との「自己愛と自己認識」をテーマにした対談が実施された。

 

リーダーの85%には自己認識がない

「insight(インサイト)」は、著者ターシャ・ユーリックの研究・実践をもとに書かれた書籍だ。アメリカでも「Strategy+Business誌 ベストビジネスブック2017」へ選出されるなど、複数の賞を授与されている。

自己認識は「仕事や人間関係のカギ」とされながら、これまでその重要性は見落とされがちだったという。自己認識とはいったい何なのか。中竹は解説していった。

中竹竜二
株式会社チームボックス代表取締役
公益財団法人日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター
1973年福岡県生まれ。早稲田大学卒業、レスター大学大学院修了。三菱総合研究所を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督就任。2010年、日本ラグビーフットボール協会初代コーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチを経て、2016年には日本代表ヘッドコーチ代行も兼務。2014年、株式会社チームボックス設立。

 

中竹はまず「自己認識とは、自分自身を明確に理解する力である」と説明。「自己認識力があることで、キャリアが成功し、成果やパフォーマンス、幸福度があがると言われている」と伝える。次に中竹は「みなさんはどれくらい自己認識できているか」と問いかけた。

参加者はみな挙手をする。自分が100%自己認識できていると思えば真上、50%なら半分の高さなど、挙手の高さはさまざまだ。だが中竹は「自己認識があるというのは勘違いです。ほぼないと思って下さい」という言葉をつげる。多くの人は、自己認識を持っていない。ある研究によると、リーダー層の85%には自己認識がないというから驚きだ。

内的自己認識と外的自己認識の両方が必要

さらに、「自己認識をめぐる大きな勘違い」もあるという。私たちはいったい、どんな勘違いをしているのだろうか。「ひたすら自分をふり返って見つめて内省すれば自己認識が高まるというのが、大きな間違い。ここが最大のつまずきになります」と、中竹は解説する。

自己認識には、内的自己認識と外的自己認識の2つがある。内的というのは「自分が自分のことをどう思うか」ということ。多くの人は、これだけを自己理解だと思っている。

しかし、社会的な脳をもつ人間にとって「人とどう関わるか」「相手が自分のことをどう思うか」は、内的自己認識と同様に重要なことである。そして、この2つには相関関係がない。内的認識が高くなれば、引っ張られて外的認識が高くなることはないのだという。

「内的な認識だけを高めればいいと勘違いすると、キャリアで躓(つまず)いたり、人のせいにしたり、幸福感がなくなったりしていきます。一番もったいないパターンです。大事なのは、自分が他者からどう見られるかを、きちんと理解することです」

また、「自分とは何か」の答えはひとつでない。「自分には色々な側面がある」と考えられることも重要である。自分のことが理解できたらそれで終わり、ではないのだ。成長を信じ、変化し続ける自分にワクワクできるマインドセットが求められる。

中竹は次に「人はひとりでは自己認識できない」ことについても解説する。これはつまり、特定の相手がいるからこそ、自己を示すのに適切な言葉が選択できるということだ。例えば、上海やスタンフォードで自己紹介するときには「私は日本人」と言うだろう。だが大阪であれば「私は東京出身」と言う。わざわざ日本人だとは言わない。人は、相手が誰かによって、自己認識の仕方そのものを変えているのだ。

自分のことを、ひとりで理解しようと思っても不可能であり、他者の力が必要。これが自己認識の前提となる。また、それに付随して「自己認識を深められる一番の要素はダイバーシティ」であるとも中竹は解説する。

障害者雇用の促進や女性役員の増加などを主眼に語られることもあるが、ダイバーシティの本質は「さまざまな人と一緒にいる結果、自分のことが理解できるということ」だからだ。

相手をコントロールできないから、苛ついてしまう

後半は、ナターリア・ポリュリャーフ氏を迎え、「自己愛と自己認識」をテーマに中竹との対談が催された。「美の探求を通じて、人の成長や人の内面を良くすることに結びつけたい」という彼女のポリシーが語られた後、いよいよ対談がスタートした。

 

司会:中竹さんは最初に「自己認識はありますか」と会場の方々に問いかけていました。おふたりは、自己認識がどれくらいありますか?

ナターリア:私は自分自身で自己認識のスキルがある方だと思っていました。でも、ソニーコンピュータサイエンス研究所で年次の契約面談をする際、社長の発言に毎回とても驚かされています。「そんなふうに思われていたの!」と。だから中竹さんのお話を受けて、私は自己認識がなかったんだなと改めて感じております。

ナターリア・ポリュリャーフ
旧ソビエト連邦(現ロシア連邦)出身。ウクライナ、ベラルーシにルーツを持つ。東京大学医科学研究所 (The Institute of Medical Science, The University of Tokyo) にて研究者生活を送り、お茶の水女子大学で理学博士号を取得後、産業技術総合研究所を経て、2006年に株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所に入社。遺伝子情報の解析をしながら、老化 防止のメカニズムの解明と応用を追求している。現代社会でキャリアを積む女性向けのアンチエイジング戦略「Pre-emptive transformation」で、“美容”や“不妊”の対策といった観点から研究を行う。

 

司会:面談ではどんなことを言われますか?

ナターリア:「ビジネスをやったら、きっと成功するんじゃないですか」などです。なぜそんなに高い評価をしてくれるのか、不思議なんですよ。私へのハードルを上げすぎなんじゃないかと(笑)。

中竹:私ももともとは自己認識が高いと思っていたんですけど、色んな人と話す中で低いなというのを痛感しています。正直に言うと、私はけっこう集団のなかで煙たがられることが多いんです。たぶん僕に原因があるんだと思うんですけど、その理由がよくわからない。

ナターリア:どうしてでしょう。見当がつかないですね。

中竹:でも、近くで働いているメンバーにフィードバックをもらったときに「そうだったんだ」と自分の認識とのギャップがあることが多いです。まさに内的自己認識と外的自己認識の違いですね。だから自分自身も、自己認識をもっと高めていきたいと感じています。

ナターリア:私が思うのは、相手に苛ついてしまうのって、多くの場合「自分でコントロールできない存在だから」なんです。つまり、思い通りにならないことが嫌なんです。中竹さんは、相手にとってコントロールできない存在だからこそ、苛つかれてしまうケースがあるんじゃないでしょうか。

自分の成長に繋がることが、“美”

司会:ナターリアさんは、美しくなるためにどのようにして自己を高めていくんですか?

ナターリア:私の定義なんですけど、美とは「視覚や聴覚、嗅覚などのありとあらゆる感覚を通して受け取り、自分の成長に繋がるもの」だと思うんです。ただ形が綺麗になるだけではなく、人の内面が良くなったり、次のステップに進めること。それが非常に重要です。

中竹:「美の定義は成長」という概念は、はじめて聞きました。ナターリアさんがいろいろな活動をする過程で、そう感じるようになったのですか?

ナターリア:そうなんです。自分も年齢を重ねて外見も変わってきましたが、「昔よりも綺麗になりましたね」と言っていただけることが増えました。それは、さまざまな経験を通じて、自分自身が成長できたからだと思っています。私は女性に、生きていくうえでずっと綺麗であり続けてほしい。だからこそ、成長し続けることで、内面的にも美しくい続けてもらうことがとても重要だと考えています。

中竹:では、初対面で「綺麗ですね」と言われるより、次に会ったときに「綺麗になりましたね」と言われる方が、美としてはより良いわけですね。

ナターリア:そうですね。その方が、私は嬉しいです。

中竹:最近私は、「オーセンティック・リーダーシップ」という本の序文を書いたんです。その本には「『弱さをさらけ出すこと』『背伸びしない自分でいること』が、かつてはカッコ悪いとされていた。でも、実はそれこそがリーダーの本質である」という趣旨のことが書かれています。これは、ナターリアさんの定義では美なのか、美ではないのか、どちらでしょうか?

ナターリア:それは「かわいい」。美というよりはラブリー、チャーミングですね(笑)。女性はむしろそういうところに惚れます。人と話すときにはまず自分の欠点をさらけ出すことで、相手に信頼してもらえるというのは、人間関係の本質だと思いますね。

まずは自分を愛してあげること

中竹:美は、外部から何かの刺激を与えることで作れるものですか?

ナターリア:作れます。生物学的に言えば、遺伝子発現を抑えられるんです。遺伝子が我々の筋肉などを形成していますから、その情報を作り直せるんですね。

それから、人生にいろいろな刺激を与えることも大事。新しいインプットに脳が反応するので、若返るんです。新しい人に出会うこと、新しい場所に行くこと、新しい何かをやってみること。全て脳に良い影響があります。

チャレンジの結果、もし悪いことが起きたとしても、「谷の深さがあるからこそ山が生まれる」と思えばいい。落ち込まないで、次は絶対に山が来ると考えて楽しめばいいんです。そういうマインドの人は、絶対に内面的な成長を遂げられます。

司会:自己愛というテーマについても伺わせてください。自分のことを愛する感覚と、他者を愛する感覚は違うものですか。それとも、同じだと思いますか?

ナターリア:あまり変わらないと思いますね。自分を愛せない人は愛されないし、誰かを愛することもできないと思います。「自分を大事にしていない女性のことを、誰が大事にしてくれるのか」ということです。きっと、誰も大事にはしてくれないでしょう?

もっと自分を大事にしましょう。例えば、自分に合った化粧品を使うとか、どんな色の服が似合うのかを考えるとか、何を得意分野として成長させるべきなのか、自分の幸せにつながる要素が何なのかをよく考えること。自分がハッピーじゃないと、生きる意味がないと思います。

私たちが何のために生まれてきたのかという意義を問うこと。自分のチャームポイントを最大限に活かすこと。それが、自己愛の重要さだと私は思うんです。

司会:自分の良さを生かすことは、結果的に外的自己認識を高めることにも結びつきそうですね。中竹さんは、外的自己認識を高めるにはどういった方法が有効だと考えますか?

中竹:結局は、自分から相手に聞くしかないですね。そうでもないと、みんな正直な意見なんて言ってくれないですよ。でも、いきなり問いかけても絶対に答えてはくれない。だから、「この人には言っても大丈夫だ」と思ってもらえる雰囲気を、日常的につくり出しておかなければならないです。あえて、弱いところや馬鹿なところもさらけ出しておくというか。

そうすることで周囲から正直なフィードバックが得られるようになって、外的自己認識も高まっていくように思いますね。

執筆:中薗昴 写真:鈴木智哉

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