トップオススメ記事「AIがクリエイターになる日」は来るのか? 人 vs AI – コンテンツ作りの最前線 –

「AIがクリエイターになる日」は来るのか? 人 vs AI – コンテンツ作りの最前線 –

「AIがクリエイターになる日」は来るのか? 人 vs AI – コンテンツ作りの最前線 –

イベントレポート 2019.03.04

「AIがクリエイターになる日」は来るのか? 人 vs AI – コンテンツ作りの最前線 –

1956年。ニューハンプシャー州ハノーバーで開催されたダートマス会議にて、人類史上初めて「AI(Artificial Intelligence:人工知能)」という用語が使われた。それから60年以上が経過し、現代のAIは当時と比べものにならないほどの発展を遂げている。

AIの進歩に伴い、よく話題に上るようになったテーマがある。「AIはクリエイターになれるのか?」だ。これまで、AIは単純作業は得意であるものの、創造性が求められる領域は苦手だとされてきた。しかし、絵画や楽曲の制作など、芸術領域にもその活用は進みつつある。

テクノロジーが目覚ましく発展する今の社会で、人はAIとどのように向き合っていくべきなのか。10月11日に開催された「人 vs AI – コンテンツ作りの最前線 -」では、4名の専門家たちがコンテンツの最先端とこれからについて議論した。

「逃走中」「ヌメロン」など人気番組の企画に携わってきたコンテンツプロデューサーの高瀬敦也氏、ももいろクローバーZの「走れ!」など数多くの有名楽曲を手がけてきた作曲家のmichitomo(ミチトモ)氏、国内外の数多くの大会でプログラミング関連の賞を受賞してきた人工知能研究者の矢倉大夢氏、システム工学者として人やロボットの創造性に関する研究を手がけテレビやイベントの演出にも携わってきた研究者 兼 演出家の國友尚氏は、どのような見解を持っているのだろうか。

「0から1を生み出すこと」は人間の特権か、否か

 AIは膨大なデータを分析することで過去の作品を模倣することが得意だ。一方で、新しいものを0→1で生み出すことは苦手だとされている。はたして、AIが全く新しいコンテンツを創造する未来はやってくるのだろうか。識者たちの見解はいかに。

高瀬:僕個人の考えとして、実は人間の場合でも、ものづくりにおいて0から1は生み出して“いない”と思っているんです。なぜなら、人間が作品をつくる場合には、絶対に他の何かから影響を受けているから。作者の頭のなかに幼い頃から現在までの膨大なインプットデータがあって、それらを真似して、要素分解して、かけ合わせることで作品ができているはずです。

だからこそ、このプロセスはAIでも模倣できるんじゃないかと考えています。AIって、基本的にはインプットとなるデータの量や種類が多ければ多いほど、深く学習して良質なアウトプットを出してくれるじゃないですか。実は、学習のプロセスって人間もAIも同じ道をたどっているんだと思うんですね。

極端な話、僕が持っている要素をすべて分解してデータとして書き起こせる時代が来たら、僕が将来思いつくであろうアイデアを先んじて予測できるようになるんじゃないでしょうか。

國友尚(くにともたかし)
チームボックスChief Experience Officeer/慶應義塾大学研究員
大学在学中よりTV番組やアーティストの演出を手がけるクリエイターとして活動後、ヤフー、KDDIでは企画部門、事業戦略部門の部門長として、新規事業開発およびM&Aによる新領域の開拓を多数成功に導く。2018年3月より現職。

 

國友:なるほど! もちろん「人の持つデータを正確に集める」という前提をクリアする必要はあります。けれど、それが実現できるならば、特定の人が将来考えつくであろうアイデアをAIが事前に考えることは不可能ではないように思えました。

矢倉さんに質問したいのですが、それ以外のアプローチで、AIが0→1で作品を生み出せるようになる可能性はありますか?

矢倉:音楽を例に挙げると、いろいろなフレーズをつなぎ合わせてムチャクチャな楽曲を膨大にAIに作らせ、人間が良いと思いそうな曲をピックアップするというアプローチは考えられると思います。

國友:現代の機械学習のアプローチはそちらに近いですよね。大量のアウトプットをランダムに生み出して、そのなかから良いものだけを選ぶことで、あたかも0から1が生まれたかのように見せかけるという。

もしも将来的に「日本国民みんなが歌いたくなる曲」をAIが生み出せるようになったとして、AIがヒット曲を量産し続けるような未来は来るんでしょうか?

矢倉:難しい質問ですね。というのも、過去のヒット作は必ずしも楽曲の力だけでヒットしているとは限らないなと思っていて。時代に合ったプロモーションや歌手の持つストーリーへの人気など、楽曲“以外”の要素が影響していることも多いじゃないですか。それらの変数をどう扱うかを考えなければいけないですね。

矢倉大夢(やくらひろむ)
チームボックスCTO
アルゴリズム・セキュリティに関する国際大会での入賞、未踏プロジェクトでの採択など、幅広い領域で活動する。コンピュータによって「人の学びに再現性を持たせられるのか」という点に興味を持ち、大学入学と同時に株式会社チームボックスに参画。プロダクト開発だけでなく、「学び」や「コミュニケーション」に関わる研究開発も行う。

 

高瀬:楽曲“以外”の要素、というキーワードが出てきたので質問したいんですけど、たとえば「プロモーションの仕方をAIが考える」といったことは今の技術では難しいんですかね?

矢倉:データが膨大にあれば可能だと思いますが、そのデータを「どう集めるか」に課題があります。今って「こういうWeb広告にしたらクリック率がこれくらい上がった」というようにデジタルのレイヤーで情報を集めるのは比較的簡単なんですが、「こういうプロモーションをしたらこれくらいの人が反応した」というようにデジタル上で完結しないレイヤーの情報を集めることはすごく難しいんです。

高瀬:なるほどなあ。話をしていて、AIによるプロモーションの手法について、「こんなアプローチだったら実現できるかもしれない」と思いついたものがひとつあって。

僕たちって、「10年前に流行ったけど最近忘れられた要素を作品に入れこむ」という作り方をすることがあります。なぜなら、流行は必ず一定のサイクルでくり返されるものだから。かつて流行っていたものにプラスαで現代的なエッセンスを加えてあげると、高い確率でもう一度ヒットします。

だから、過去に流行したもののエッセンスをAIに学習させ、将来的にどんなものの人気が出るかを予想させることで、AIに擬似的にプロモーションの仕方を考えさせることは可能かもしれないですね。

 

人は「AIの生み出したコンテンツ」を愛せるか?

人間より速く走れる自動車が登場しても、私たちはマラソンを観たいと考える。なぜなら、ランナーの持つ“人間くささ”に我々は惹かれるからだ。では、「AIがコンテンツを生み出す時代」が来たとき、はたして私たちはそのコンテンツを楽しめるのだろうか。

michitomo:誤解を恐れず言うなら、音楽における人間くささって“下手くそさ”なわけです。機械で作っているなら、音を出すタイミングなんて絶対にピッタリ合います。でも、人が演奏するとどうしてもわずかなズレが発生する。それがグルーヴになるわけだし、人間らしさになるんですよね。

michitomo(みちとも)
作曲家
ももいろクローバーZ、BIGBANG・土屋アンナなど、ロック・ダンスミュージックを基軸としたキャッチーかつ美しい楽曲はmichitomoサウンドと呼ばれる

 

高瀬:生音の良さって、BPM(楽曲のテンポ)が一定じゃないところだもんね。

michitomo:そうなんですよ。だから、機械と人間の演奏を共存させるのは難しいんです。人間が生で演奏したものに機械的なものを入れると、気持ち悪い楽曲になっちゃう。解決策として、機械の側をわざと下手くそにするんですね。リズムやアタックの強さなんかをバラバラにして。そうすると、非常に自然な仕上がりになるんですよ。

矢倉:オーケストラの合奏ロボットを作っている研究があるんですが、その研究結果でも「ぴったり合わせるよりもちょっとズラした方が上手く聴こえる」という発表がされているんです。まさに同じ話だな、と。

高瀬:michitomoさんに質問したいんですけど、作曲ソフトのなかにリズムやアタックをズラしてくれる機能が入っているんですか?

michitomo:そうなんです。しかも機能の名前が“ヒューマナイズ”って言うんですよ。でも逆に言えば、その人間っぽい“ゆらぎ”をAIが再現してくれるようになれば、機械が人間らしく演奏できるようになるでしょうね。将来的には「ベーシストの○○さんっぽく」とお願いしたら、それっぽく弾いてくれるようになるのかな。

矢倉:特定のミュージシャンの演奏データを蓄積し続ければシミュレーションできるようになると思いますけど、きっとミュージシャンは抵抗するんじゃないですか?

michitomo:でしょうね。でも絶対に、世の中のミュージシャンのうち誰かひとりはやる人が出てくるはず。アーティストって新しいものが好きですから。それが実現したとき、楽曲制作のプロセスが今とどう変わるのかは見てみたいですね。

國友:高瀬さんは「AIがコンテンツを作ること」について、他のエンタメ領域ではどうでしょう?


高瀬敦也(たかせあつや)
テレビプロデューサー
フジテレビ編成制作局にて「逃走中」「戦闘中」「Numer0n(ヌメロン)」など企画性の高い番組を多数企画。2018年独立、株式会社ジェネレートワン代表取締役CEO。

 

高瀬:僕は漫画制作に携わっているんですが、漫画をつくるときって最初にキャラクター制作から始めるんですね。「主人公のmichitomoさんという人がいて、こういう特徴や性格、過去の経験があって」という感じに。すると、ひとりでにキャラクターが動き出して、ストーリーができていくんですよ。

有名脚本家の倉本聰さんも、そうやってドラマを作っているらしいです。倉本さんの場合は、劇中には出てこない裏設定なんかも徹底的に作りこむと聞いたことがあります。

極端な話、この手法ってAIに適応することが可能なんじゃないかと思っています。物語に必要なデータを定義していくことで、アウトプットのパターンが決まってくるという方法論なので、AI向きなんじゃないかなと。

矢倉:確かに、設定が完璧に決まっていて誰がやっても均質的なアウトプットになるということは、ビッグデータの分析をもとに結果を出しているのと同じですからね。でも、パターンの決まったアウトプットが増えて、似た展開のドラマばかりになると、人間って飽きてしまわないんですか?

高瀬:エンターテイメントにおいては、人間の感じる気持ちよさって超ベタでどの時代も同じなんですよ。たとえば、すれ違いや三角関係、相手のことが好きなのに嫌われる行動をつい取ってしまう、とか。どの物語でも出てきますよね。だから、同じパターンのくり返しでも構わないんです。実はストーリー制作って、すごくAI向きの作業なんだと思います。

“自我”こそ、人間が持つ最大の短所であり、最大の長所

AIがいつか多種多様な人間の仕事を代替するようになったとして、それでもなお「人間が担うべき仕事」とは何なのか。セッション終盤では、AIについて議論を深める過程において、逆説的に“ヒト”の持つ特徴が可視化されていった。

高瀬:僕はアイドルのプロデュースもしているんですが、ファンの方って「自分がアイドルを育てる」という感覚で応援してくださるじゃないですか。これをAIの学習プロセスに応用できないのかなと思っています。要するに、AIのアイドルをファンの方々が育てていく、という企画が実現できるんじゃないかと。

AIの課題って、学習に使うインプットデータが大量に必要だから、データ収集が面倒なことじゃないですか。でも、アイドルファンの方々って熱量が高いので、その面倒な作業をむしろ楽しんでやってくれるのかなと思って。

矢倉:実は、バーチャルアイドルにファンの方々が言葉を教えていくという企画はもう既にありますね。

高瀬:あるんだ! すごい。それでどんどん成長していくと。

國友:高瀬さんが話してくださったように「大量のデータをどうやって用意するか」は、AIの進歩を考えるうえで重要なテーマです。

現代では、インターネットの普及により数多くのテキストデータが集まる環境が整ってきましたが、画像や音声、映像などのリッチデータは、後発で扱われはじめた状況です。つまり人間の五感でいえば、まだ視覚と聴覚に依存したデータしか扱われだしていないのですが、触覚や味覚、嗅覚などのインプットデータを収集していくのにはまだまだ難易度が高いんですね。

そういった情報も蓄積していくことができれば、情報の多様性はすごく高まるように思えますが、どうすれば取得できるようになるんでしょうか?

矢倉:画像や音声、映像などのデータが抜き出せている理由って、人間が持つ視覚や聴覚の間にテクノロジーが入りこんで、目や耳から入る情報をうまくデジタルデータに変換できているからなんですね。だから、より多様な情報を集めるには「視覚や聴覚以外の感覚に対して、テクノロジーがどれだけ自然に入りこめるか」がキモだという気はします。

そのために必要なのは、データを収集するためのプロダクトが一般層に浸透することです。たとえば、Apple Watchには心拍数を計測・送信する機能がありますが、この機能を日常的に使っている人はあまりいません。つまり、テクノロジーとして実現可能だというだけでは、データを集めるには不十分なんです。多くの人がプロダクトを日常的に使うレベルまで落とし込まなければいけません。

國友:どうすれば一般層に浸透するんでしょう?

矢倉:そこで必要になってくるのが、コンテンツの力だと思います。高度なテクノロジーと、それを「使ってみたい」と思わせてくれるようなコンテンツ。その両軸が揃えば、収集できるデータの量や種類は一気に増えていくんじゃないでしょうか。

高瀬:少し話を戻すと、先ほど議論したAIのアイドルってすごく「マネジメントする側のニーズ」にマッチしているなと思ったんです。というのも、エンタメの仕事に携わっていて一番やっかいなのって、演者の“自我”だったりわけですよ。たとえば、アイドルが売れてから急にわがままを言い始めたりとか。その反面、AIは自我がないので、わがままも言わない。これはAIの持つ大きな特徴ですよね。

michitomo:人間って面倒くさいのが嫌いだし、損することも嫌い。でも、自己実現はしたい、ってジレンマをみんな抱えているじゃないですか。AIはそのジレンマを最適化してくれそうだという期待感がありますよね。面倒なことを最小限にしながら、実現したいことを叶えてくれるという。

矢倉:おふたりが話してくださったように、僕個人としても、それが人間とAIとの一番面白い付き合い方だと思っています。AIには自我がないわけですが、言い換えればそれってAIにはモチベーションがないということと同義です。つまり、何かを成し遂げたいという気持ちがない。

一方で、人間はモチベーションがあることが取り柄です。だからこそ、何かを成し遂げたいのに、スキルや生まれ持った素質が足りなくて実現できず、悔しい思いをすることがあるわけですよね。

でもいつの日か、人間が持つモチベーションをAIがサポートしてくれる未来がやって来るのならば、非常にポジティブですし夢があります。きっと今後は、人間とAIはそういう形で共存していくんだと思いますね。

 

人間とAIは対立する概念ではない

「AIがコンテンツを制作できるのか」という議論は、逆説的に「人間はどうやってコンテンツを制作しているのか」を解き明かしていくプロセスでもある。AIという彫像に投射する光が強ければ強いほど、その反対側には人間の形状をした影がくっきりと浮かび上がる。

AIと人間はけして対極にある概念ではない。光と影の間にある無数のグラデーションのなかに、“これからの時代”を創るクリエイティブのヒントが隠れている。AIの持つ可能性と、人の持つ可能性。その両方をありのままに見据え、受け入れていくことが、現代を生きる私たちには必要なのかもしれない。

 

執筆:中薗昴 写真:漆原未代

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