トップオススメ記事テクノロジーを武器に、”曖昧で複雑すぎる”人間の「学び」を支援する――Teambox CTO 矢倉大夢

テクノロジーを武器に、”曖昧で複雑すぎる”人間の「学び」を支援する――Teambox CTO 矢倉大夢

テクノロジーを武器に、”曖昧で複雑すぎる”人間の「学び」を支援する――Teambox CTO 矢倉大夢

社員インタビュー 2018.10.30

テクノロジーを武器に、”曖昧で複雑すぎる”人間の「学び」を支援する――Teambox CTO 矢倉大夢

矢倉大夢

中学1年でプログラミングを始めて以降、アルゴリズム・セキュリティに関する国際大会での入賞、未踏プロジェクトでの採択など、幅広い領域で活動する。コンピュータによって「人の学びに再現性を持たせられるのか」という点に興味を持ち、大学入学と同時に株式会社チームボックスに参画。プロダクト開発だけでなく、「学び」や「コミュニケーション」に関わる研究開発も行う。現在、筑波大学に在学しながら、国立研究開発法人でも研究に携わるなど、組織の枠を超えたキャリアを実践中。

「人の変化」を定量的に捉えるのは難しい。昨日と今日の自分、その変化の度合いを果たして数値化できるだろうか?

コーチングを通じて人の変化や成長に向き合う会社がある。「大人が素直に学び合う社会をつくる」をミッションに活動するTeamboxだ。同社でCTO(Chief Technology Officer)を務める矢倉大夢は、「人の学び」に科学的にアプローチし、それを体系化しようと取り組んでいる。

実践と研究、テクノロジーと人文学の交差点で、彼はいま何を考えているのだろうか。

現在TeamboxでCTOを務める矢倉は、大学に通いながら産業技術総合研究所で音楽レコメンドエンジンの研究も手がける。そんな彼が追求するのは、「どのようにテクノロジーで人に影響を与えるか?」というテーマだ。なかでも研究に取り組んでいるのは、「人の集中を促す音楽レコメンドエンジンの開発」だ。

「人間をどれだけ操作できるのか、あるいは人間にどんな干渉が可能か。ずっと関心を持っていたテーマを解き明かすために、今は人の集中を促す音楽レコメンドエンジンを開発しています。人間の集中やモチベーション向上、学びに対して音楽を活用してアプローチしているんです」

Teamboxの事業とは関係なさそうにも見える。だが、視点を少し変えると矢倉の研究はリーダーシップやマネジメントにも応用が効くものだという。

「Teamboxは、『大人が学びを通じて変化すること』にアプローチしています。そのためにデザインやテクノロジー、そしてコーチが自身のスキルを掛け合わせている。人間の学びをどう支援するのか?という視点で、音楽レコメンドエンジンの開発と根底で通じるものがあるんです」

Teamboxとしても、コーチングに再現性を持たせるために、より科学的なアプローチを模索していたタイミング。矢倉はCTOとしてTeamboxに参加する。「ビジネスの現場に関わることで、自身の研究テーマが社会でどのように活きるかを知りたかった」と、矢倉は当時を振り返る。

人の変化を促すためにテクノロジーを活用する矢倉だが、もともと関心があったのは人文知や思想史であった。「人間をどのようにモデル化するか」そんな問いが彼の中に生まれていった。

「哲学や思想史を学んでいく中で気づいたのは、『人類は人間をどのように捉えればモデル化できるか』にずっと取り組んできたこと。哲学や思想が挑戦してきた領域を、いまはテクノロジーの力を使って発展させたいんです」

人文知とテクノロジーが交差する地点に立つ。矢倉が研究を進める、集中を促す音楽のレコメンドエンジン開発も、Teamboxのコーチングも、まだ曖昧な部分が多い領域だ。それらを体系化していくのは、とてもクリエイティブな試みだと感じられる。

「人間は曖昧な部分があり、とても複雑です。単純なモデル化をするのではなく、複雑なままで人間を捉えていくことに挑戦したい。たとえば、コーチングの現場において同じフィードバックを行ったとしても相手の反応は異なりますよね。それを単純化しようと試みても意味はないんです」

「あなたの成長を信じている」メッセージを投げかけるのが人間の役割

矢倉はCTOとして、コーチングに関するサービスの開発や改善に取り組んでいる。Tehuがデザインやクリエイティブを担当し、矢倉がテクノロジーを見るという役割分担だ。

現在は、組織の状態やリーダーのマネジメントに関するデータを取得し、どのようにフィードバックをしていくかのシステム開発を担当している。

「コーチングの効果を測定するためにも、参加者の変化を定量的に捉えることは重要になります。大人の学びには痛みが伴いますが、その”痛み”はどれだけ効果があったのかを明らかにできなければ意味はないです。自身の『弱さ』に向き合う中でその成長を実感する。成長する苦しみの中で、テクノロジーはその成長を実感する心の支えになるものでありたい」

現在はTeamboxが提供する日々の振り返りツール「daywill」などを通じてデータを取得している。だが最終的にはデータを入力せずとも、人と人のコミュニケーションを記録し、変化を明らかにしたいという。矢倉はテクノロジーによってコーチの仕事を支援する中で、Teamboxにおいてコーチがやるべき仕事が見えてきた。

「コーチングにおいて人間がやるべきことは何か。それは、学びに伴う痛みを与えることです。人間が秀でているのは、確率が低く分布が広い事象に対応すること。痛みを与え、相手がどのようなリアクションをするかには幅広い対応力が必要になるので、そこは人間がやるべきなんです」

学びに伴う痛みを与えるだけではない。成長しようともがき苦しんでいる人にポジティブなメッセージを投げかけることも人間の役割だ。

「その人の行動を促すために『あなたの成長を信じている』とメッセージを投げかけるのは人間でないと意味がないと思います。組織の中で仕事をしていて、同僚や部下に『この人はもう変わらないだろう』と思われている人がいるとして、その人はひとりでは変化することはできません。コーチが付き添い、信じていると伝え続けることで、人は変われるんです」

「人の変化」に向き合うことで、より良いテクノロジーの可能性を模索する

Teamboxでは全てのメンバーがコーチングの現場に出る文化がある。CTOを務める矢倉も例外ではない。半年のトレーニングに参加した時の経験を、矢倉は語ってくれた。

「トレーニングに参加して半年で変わらなかった人がいました。その人は日々の振り返りツールに対しても『こんなツールは見たくもないし、もうやりたくない』と話していたんです。学びには痛みが伴いますが、自身が開発したツールが彼の役に立たなかったことが悔しくて」

そのプログラムでは例外的に参加者のフォローアップを行うことになった。「その人が成長できるまでコミットしたい」矢倉の中にこんな思いが芽生え始め、4ヶ月間その参加者に向き合い、成長に伴走したという。

「システムを改善しながら、その人の成長に向き合い続けました。4ヶ月が経った頃には、弱みを自分で把握し、日々の振り返りも習慣化されていました。その人の変化に向き合えたことが凄く嬉しかったんですよ」

現場に出ることで学ぶことも多くある。自身が開発したシステムへのフィードバックを直接受けることで、そのシステムを改善しながら人の成長に真摯に向き合ったことだ。

「人の変化」に徹底的に向き合う中で、矢倉氏の意識も変わった。学びの姿勢がない人に変化を促すには、という視点が生まれたという。

「学ぶ姿勢がある人の成長を促すことは、そこまで難しくない。相手の弱い部分を分析し、的確に伝えればいいわけですから。そうではなく、心を閉ざしている、学びが必要だと自己認識ができていない人に変化を促すことは難しいんです。学びに対してポジティブでない人をテクノロジーでどう変えればいいのか、そんな視点が自分の中で芽生えていきました」

Teamboxで働くメンバーは「誰よりも学びに貪欲でなければいけない」

Teamboxで大人の学びを支援する中で、矢倉の「学び」に対する意識も変化してきた。「学びを通じて人の変化を促す会社で働いているんだから、誰よりも自分自身が学び続けることに真摯でなければいけないと思うんです」矢倉がこう語るように、Teamboxのメンバーは学びに対して貪欲な姿勢を持っている。

学びに向き合うために、Teambox社内ではメンバー同士の相互フィードバックによって自身の弱点を見つけ、それを克服していく仕組みがある。

「コーチは自身のスタイルを持ちながらマネジメントに取り組みます。僕自身もスタイルを探るなかで、面倒くさがりで姑息だと指摘されたんです。たとえば、オフィスにいるときに自分から挨拶をしないとか…(笑)。コミュニケーションを面倒くさいと思ってしまう癖を直すために、2人組の社内チームで、お互いの弱点を直すために行動し成長しています」

矢倉はTeamboxが支援する「大人の学び」が社会に与えるインパクトをどのように見据えているのか。

「大人になると学ぶことを辞めてしまう人がいます。学ぶのは、社会に出て働くまでの時間という認識ですよね。ですが、大人になって自分自身を変えられるのは『学び』だと信じています。その学びの再現性を高めるためにも、僕はテクノロジーを活用していきたいんです」

「人生100年時代」というキーワードを見ない日はない。変化が激しい時代において、同じ状況のままではいられない。社会が変化すれば、個人も変化を強いられる。だが、個人が主体的に変化すれば、社会に対しても変化を与えられる。大人の学びは、社会の変化を個人が主体性を持って推進するツールだとも言えるだろう。

成長の過程にあるTeamboxのような小さな組織では、日々新たなことに向き合わなければいけない。矢倉も変化し続けることを大切にする。

「組織が拡大する中で、今後はマネジメントにも向き合わなければいけないケースも出てくるはず。今はひとりの開発者・プログラマーですが、僕自身も学びを続けることで、組織の成長に貢献していきたんですよね」

執筆:岡田弘太郎 写真:佐坂和也

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