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VPoEが成功の秘訣を公開! DX: Developer Experience (開発体験)が良い環境づくりとは?

VPoEが成功の秘訣を公開! DX: Developer Experience (開発体験)が良い環境づくりとは?

イベントレポート 2018.10.12

VPoEが成功の秘訣を公開! DX: Developer Experience (開発体験)が良い環境づくりとは?

DX: Developer Experience (開発体験)とは「メンバーが楽しみながらシステムを開発・保守できているか」を示す概念だ。DXの良い環境はメンバーが生き生きと働けるため、結果としてプロダクトの質や業務効率も向上する。ものづくりを行う企業にとって「いかにしてDXを高めるか」は重要なテーマだ。

では、エンジニア組織を束ねているVPoE(Vice President of Engineering)たちは、どうやってDXの良い組織を生み出してきたのか。DevLOVE(※)が主催した「DX: Developer Experience (開発体験)が良い環境づくりとは? 〜VPoEのリアルなお仕事〜」では、Sansan株式会社、株式会社チームボックスそれぞれのVPoEが登壇。優れた組織づくりのために行っている施策やノウハウを公開した。

※……開発(Develop)を愛する人たちのコミュニティ。開発の楽しさを再発見し、広げるために、明日の開発の現場に役に立つことを目指した勉強会やイベントを開催している。

組織改善への一歩の踏み出し方

まずはSansan株式会社でVPoEを務める宍倉功一氏による「組織改善への一歩の踏み出し方」だ。同社は2018年6月よりVPoEポジションを設置し、体制の強化を行った。Sansanはどのように新体制へと移行したのか。事業・文化・人への理解を進め、日々どのような課題に向き合いながら改善を進めているのか。その歩みをふり返った。

宍倉功一
Sansan株式会社 VPoE
学生時代よりベンチャーにて複数のサービスの立ち上げの開発を担当。大学院卒業後はSI企業に就職し組み込み関連の部門に所属。その後、研究開発及びWeb受託開発を主に置いた企業に転職しWeb受託開発を担当。2006年に日本向けオフショア開発を目的とした子会社をベトナム・ハノイに設立したことをきっかけに現地法人の代表に就任。2009年にSansan株式会社に入社。2010年のEight事業部発足時より参画し、プロダクト開発業務及び開発マネジメントに従事。2018年6月よりVP of Engineeringとなり、組織・人事・開発プロセス改善を担当。

Sansanでの私のミッションは、各チームに所属しているエンジニアやデザイナー、プロダクトマネージャーの「強化」と「エンゲージメント向上」です。現場の課題を解決し、働きやすい環境を整え、各メンバーが生み出す価値を向上させることを目指しています。

2018年6月から私がVPoEというポジションに就くのと同時に、会社としてCTO(Chief Technology Officer)とCPO(Chief Product Officer)という責任者も立て、それぞれがフォーカスすべき点を明確にしていくという組織改革を行いました。今回は、過去にさかのぼり、当社がどのように組織を改善してきたかをご紹介したいと思います。

いかにして、“継続的な改善”を実現するか?

Eight事業部では、立ち上がって2年くらいまでの初期フェーズにおいては、エンジニア1人ひとりの育成や、事業の立ち上げに力を注いでいました。プロトタイプをくり返し開発しながら、プロダクトの可能性を探っていた時期です。

その後、スマホが普及したことを契機に、Eightをより多くの方に使っていただくために開発チームが発足しました。エンジニア10名ほどのチームでしたが、各エンジニアには個性がありますから、お互いの目線をどう合わせていくか、チームビルディングをどう進めるかなどについて試行錯誤しました。

2014年くらいからはチーム数が複数になり、事業としてもより力を入れていこうと考えたフェーズになります。この時期から、スクラムプロセスを採用するようになりました。プロダクトをより良いものにしていくには、事業戦略上におけるビジョンを定義づけ、それに向けて長期的なスパンでプロダクトを変えていくことが必要になります。その一方で、KPIを指標として日々の継続的な改善もし続けなくてはいけません。それらの課題を解決するには、チームのコミュニケーションを重視するスクラムが適していたんです。

▲真剣な眼差しで話に聞き入る参加者。Sansanの成長を支えた立役者のセッションとあって、みな興味津々の様子だった。

自主性を促すからこそ、成果が上がる

組織づくりにおいて一番重要なのは、「コミュニケーションをどう取るか」です。ミーティングで話す内容や社内で使用するコミュニケーションツールなどについても、日々改善していきました。

また、Eightのみならず、Sansan事業部の拡大期においても、いくつかの課題が出てきました。そこで、技術系の役員や各部門の開発責任者、デザインのリーダーを交えた合議体形式で、社内の課題を解決する体制を取るようになりました。取り組んだ例としては、部門共通課題の解決やエンジニア・クリエイターのための制度作成です。

具体的には書籍購入制度やソフトウェア、ハードウェアの購入補助、全社的なコミュニティづくりなどです。今でも高い利用率を誇るのが、ランチタイムに勉強会を開催するとランチ代が補助される制度です。

この制度が良かった理由としては、エンジニアやプロダクトマネージャー、デザイナーが自発的に自分の勉強したいテーマを挙げ、一緒に勉強会をするという制度であること。逆に続かなかったものとしては、四半期から半年に1回、全社のエンジニアを集めて定期的に行った勉強会です。

社内のコミュニケーションの活性化を目指したのですが、強制参加ということと企画コストが高くて継続できませんでした。つまり、強制参加ではなく自主参加だからこそ、活用されて成果を上げているということです。

コーチングスタッフは、組織改善を担う影の立役者

これまでは会社の話をふり返って紹介したのですが、続いては私が社内で取り組んできた施策についての話をしたいと思います。

チームづくりにおいて最初に直面した問題は「個人個人の考え方の違い」でした。そこで、取り組んでとても効果があったのが「ストレングスファインダー」と「エニアグラム」の2つです。

「ストレングスファインダー」は自分の強みである5つの要素を、Web診断テストを通して知るツールです。社内では全メンバーのストレングスファインダーの結果が共有され、誰がどういうポジションにいると力を発揮できるかなど、メンバーの強みを理解するために役立ちました。

また、個人の特性を知ることができる「エニアグラム」は、自分を理解するのにも役立ちますし、各人の役割が明確になることで「どんな仕事を担当してもらうと成果が出るか」のヒントにもなります。これらの取り組みは、大きな成果につながりました。

また、ふり返りのフレームワークとして有名な「KPT(Keep・Problem・Try)」を行った後に、アクションプランにつなげていくというトレーニングをチームで行いました。

しかし、このような取り組みを日常的にやっていても、新しい課題というのは継続的に生まれてきます。そこで当社では、人事部に組織改善のコーチングスタッフを配置しています。コーチングスタッフの存在こそ、Sansanの組織づくりにおける大きな特徴だと思っています。

彼らと話し合ったからこそ、「エンジニア組織を管轄する責任あるポジションに、人が就いていない」という課題が見つかりました。それが、CTO、CPO、VPoEを同時に立てるという施策のきっかけになっているんです。

その体制の中で、私はオフィスをどう働きやすい環境にしていくかを考えたり、各メンバーとの1on1を実施したり、といったことをやっています。特に力を入れているのは、エンジニアリングマネージャーの育成です。今後も現場をリードできるメンバーを育てていくことで、DXの高い環境づくりに務めたいと考えています。

▲体制変更後のSansanは、情報発信にも非常に力を入れている。2018年9月より開始した技術ブログ「Sansan Builders Box(https://buildersbox.corp-sansan.com/)」はその活動の一環だ。

現場で役立つ1on1の原則 〜ヒトと向き合うコツ〜

続いては、株式会社チームボックスでリーダー向けのコーチングを担う安西剛による「現場で役立つ1on1の原則 ~ヒトと向き合うコツ~」だ。安西はSansan株式会社でも技術顧問を担当し、エンジニアリングマネージャーの育成に取り組んでいる。本セッションでは、彼が数百回もメンバーとの1on1を行った経験や、企業のリーダー向けにコーチングコーチをしてきた経験から、1on1でメンバーと向き合い、より良い環境づくりを実現するためのコツを紹介した。

安西剛
株式会社チームボックス VPoE
ビッグローブで開発組織アジャイル化やドメイン駆動設計導入に従事した後、クラウドワークスで VP of Enginneringとして、組織運営、人材育成、人事制度設計、デザイナー組織立ち上げ、プロダクト開発などの全体統括を行った。足をばたつかせながら組織での泥臭い問題に対峙していたら、より「ヒトの成長」を深掘りしたくなってしまい、株式会社チームボックスでのリーダー向けコーチ業や、3社の技術顧問として、ヒトの成長と向き合っている。

環境は人が作ります。だからこそ、「どうやってエンジニア1人ひとりの力を引き出すか」が、DXの良い環境づくりには大切です。そのためには、1on1が非常に有効だと考えています。今回はすぐに取り組める1on1の原則をご紹介していきます。

1on1を行う理由や、実施した後の相手の状態を“言語化”する

そもそも、1on1って何のために行うんでしょうか? 私は「組織を成長させるため」だと考えています。より具体的に言うと「信頼関係の構築」「課題の把握と見える化」「個人の成長支援」などがその構成要素になってきます。もちろん、他の方や企業では異なる目的の場合もあると思います。大事なのは、組織や個人同士で1on1を行う理由を“言語化”し、目的を明確にしておくことです。

ちなみに、皆さんは1on1に向けてどのような準備をしていますか? 事前準備なしで1on1に挑む人もわりと多いんじゃないでしょうか。あ、頷いていらっしゃる方が何名かいますね(笑)。1on1のための準備をするのは、結構大変です。でも、これをやることで効果が最大化できるので、必ず準備をしたうえで1on1に挑むことをおすすめします。

でも、どんな準備をすればいいのかがよくわからない方もいるかもしれません。そんな方にぜひやってほしいのは、「相手が1on1を終えたときに、どのような状態になっているか」を考え、言語化することです。例えば、「Aさんが『安心した』と言っている状態」や「Bさんが自分の成長に向けての目標設定ができている状態」などがそれにあたります。

私が1on1を行う場合は「次の1on1でどういう状態にしたいか」「自分は何をするのか」「何を質問するのか」などをスプレッドシートに細かくまとめています。その結果、想定外のことが起きても対応でき、かつ効果が出ていると実感しています。ぜひ、やってみてください。

経験上、こうした準備がないとただ駄弁(だべ)って終わるような感じになってしまうことが多いんですよ。それから本当にショックなのは、メンバーから「この時間って必要ですか?」と言われてしまったり。結構あるんですよ。最初の1か月ぐらいは新鮮な気持ちでやれるんですが、ずっと同じことを続けていたら相手が飽きてしまうんです。

せっかく貴重な時間なので、ぜひ1on1が目指す目的や、1on1の結果としてどんな行動が起きるのかを明確にしたうえで挑んでください。

1on1を行い、関心を寄せる。話す量は「相手8割、自分2割」

さて、先ほどエンジニア1人ひとりの力をいかに引き出すかという話をしましたが、それは相手の“本音”をどうやって引き出すかに通じます。ここで相手から本音を引き出すための4つのポイントをご紹介します。

1つ目は元も子もないんですが、まず「1on1をする」ことです。部下のモチベーションというのは、上司から寄せられている関心の量に比例するらしいんですね。「愛の反対は無関心」とよく言うじゃないですか。それと一緒で、ポジティブだろうがネガティブだろうが、フィードバックがある状態の方が全く無い状態よりもモチベーションが上がるそうなんです。だから、1on1を行うこと、そして相手に対して関心を寄せることが大事になります。

2つ目は「ただ聴く」ことです。相手の会話をさえぎらずに聴くのって、とても難しい。特に、マネージャーになる方って話が上手な人が多いので、ついつい自分で喋ってしまうんですよね(笑)。話す量としては、「相手8割、自分2割」を目指しましょう。

ですが、2割しか話せない状態で目標を達成するのは大変です。そこで、2割で何をするかというと「問いかけ」が大事になります。これが3つ目のポイントです。このときやってはいけないのが、マネージャーの意見を押し付けるような質問。そうではなく、相手が自分で結論を出せるような質問をしてください。

質問された側は、「質問に答える(言語化する)→発言したことに対して、どう行動するかを自分で決める」というプロセスを辿ります。この「自分で決める」というのが大切で、これによって目標を達成する確率が格段に上がります。

では、どうすればそんな質問ができるんでしょうか。簡単でおすすめなのは、KPTを利用して「枠組みを作る」ということです。良かったことと悪かったことを付箋で書き出してもらい、その内容を起点に質問します。そうすると、勝手に相手の本音が出てくるんですね。このように、枠組みを提示すると本音を引き出せるので、スピーディーに目標を達成できます。質問が苦手という方は、このやり方で進めていけば良いでしょう。

本音を引き出すための4つ目のポイントは「承認する」ことです。承認とは「あなたがそこにいていい」と存在そのものを認めること。人間って、認めてくれる相手には本音で話せるじゃないですか。

そのためには、「挨拶をする」「名前を呼んであげる」「相手の言葉に相槌を打つ」「相手が言ったことを復唱する」「やったことを褒める」といったアクションが非常に効果的です。特に褒めることってなかなか難しくて、普段から相手のことをちゃんと見ていないとできないんですよね。それから、究極的な承認は「信じて任せる」ことだと言われています。

▲本セッション内では、一定時間おきに隣り合った参加者同士のディベートが行われた。エンジニアにとって関心度の高いテーマとあってか、会場は大いに盛り上がっていた。

成長を信じることが、DXの良い職場づくりにつながる

ここで、私がコーチングを行ったある会社のマネージャーの話をご紹介します。マネージャーはあるメンバーのことをいつも低く評価していて、そのメンバーはマネージャーの顔も見たくないという関係でした。良くなかったのは、そのマネージャーから「どうせ彼らに何をやらせてもダメ」というオーラが常に出ていたんですね。

そこで私はマネージャーに「ちゃんと相手の話を聞いていますか? あなたは彼が成長できることを信じていますか? 絶対に信じてください」とお伝えしたんです。すると、マネージャーは行動を変えてくれました。その後、メンバーの彼は私とのコーチングの際に「上司が変わってきました。彼が変わったのだから、僕も変わらないといけませんね」と言ってくれたんです。

この経験を通じて学んだのは「相手に対して『ダメな人だ』と思っていたら、態度や言葉の端々からそれが伝わってしまう」ということです。そうすると、お互いの信頼関係はなくなってしまいます。

DXが良い環境づくりのためには、どんなときも「成長することができる」と信じていることが大切です。あえて「相手」という主語を取って話したのは、「自分」のことも信じてほしいから。自覚的にやらないとなかなかできないので、ぜひこの機会にトレーニングしてみてください。

最後にお話しする原則は「1on1の内容をふり返ること」です。学びにおいて一番重要なのは、フィードバックです。お互いで感想を言い合うとか、5点満点で点数を付けるなどフィードバックすることで、次へ向けた改善につながります。その内容を記録しておくと次回への準備の際にも役立つので、ぜひやっていただければと思います。みなさん、ご清聴ありがとうございました!

執筆:中薗昴 写真:伊藤愛輔

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