伊藤忠商事株式会社
ITOCHU Corporation.
業種:商社
従業員数:3000人以上
※ このページ内における会社情報や所属・役職などは 取材当時のものです。
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伊藤忠商事株式会社様は、幅広いビジネスをグローバルに展開する総合商社です。同社において2018年から19年にかけて2シーズンにわたりTeambox LEAGUEを導入いただいています。その理由と導入後の組織の変化について、同社人事・総務部長の垣見俊之様に話を伺いました。

ミドルマネージャーの育成が課題に

垣見さんは人事・総務部長として生産性向上のための朝型勤務制度やカジュアルな服装を推奨する「脱スーツ・デー」を導入するなど、働き方改革を指揮してこられたお一人ですね。組織づくりの上では、リーダーの育成について、どのような課題意識を持っておられますか?

弊社は、いわゆる5大商社の中でも極端に単体での従業員数が少ない少数精鋭体制をとっていますから、「個の力と組織力を如何に高めるか」という課題を持っていたんですね。個の能力を高めるというのは、我々の中で当たり前にやるべきことだと思っているんです。けれども、スピード感を持ってビジネスを創っていく、あるいは世の中で勝ち続ける経営をしていくとなれば、組織力をいかに高めていくかということが、より重要になってきます。昨今、大きな課題として浮上してきたのが、ミドルマネージャーをどう育て、マネジメント能力をどう上げていくかということ。古くて新しい課題です。ライフスタイルやキャリア形成の考え方が多様化してきましたし、組織も社員も多様化してきましたので、従来型の強いリーダーが引っ張っていくというあり方だけではうまくいかないのではないかと。そんな背景から、柔軟に対応できるミドルマネージャーの育成にスポットを当てたプログラムを実施したいと考えていました。ですから、Teambox LEAGUE (以下、TBL)のプログラムを知って、ドンピシャだという感じを持ったんです。

具体的にはどんなところが「ドンピシャ」とお感じになったんですか?

リーダーの行動変容を促す研修は世の中にたくさんあって、私どものところでも様々な実践をしてきました。ただ、どちらかと言うと、既存のプログラムはアクションラーニングやコーチング、講義形式等、単発で行うことが多いんですよね。TBLの基本方針は、「頭で『分かる』ことと、実践の場で『出来る』ことは違うんだ」と。そこが明確ですよね。TBLの場合、「出来る」に持っていくための実践を重ねるところが、ミドルマネージャーの育成にちょうどよいのではと思いました。

個人の力しか備わっていなくて、組織力を高める実践をしなかった場合、最終的にどんな風になるという危機感がありますか?

まず、会社が強くならないですね。一人一人の社員が能力を高めることはベースなんですけれど、組織力向上という方向にベクトルが向かないと、全社一丸になって物事を進めていくというところの力が削がれます。特に私どもは、次世代ビジネスの創出に力を入れていこうという方針を出しています。会社としての突破力を出していこうという時に、組織力が弱いと、影響が出てくると思います。特に人材が多様化すればするほど、組織力の向上はますます必要になってきますね。

ミドル層が抱える「2つのジレンマ」からの脱脚

トレーニングを受けたリーダーの変化を感じる機会はありますか?

ありますね。リーダーたちが部下の状況を把握したり、相談に乗りやすい雰囲気を作ったりというところを非常に意識するようになったという効果は出ていると思います。「Feeba」(※ Flica: Feebaの旧名称)を使って、リーダーが毎日部下からフィードバックを受けるという、習慣化の影響は大きいです。以前は課会、室会、部会を中心に「マス」のコミュニケーションが多かったんですが、そうするとコミュニケーションの取り方が上司から部下へと一方通行になりがちでした。TBLの導入後は、1on1ミーティングの他愛ない会話でのコミュニケーションをベースにしたコミュニケーションが増え、リーダーと部下の距離はぐっと近くなったと感じます。

実際、私は御社のリーダーの方々のコーチを務めさせていただいているんですが、担当したお一人のリーダーは、当初、「僕らの世代は、リーダーの背中を見て育ってきたもんですよ」とおっしゃっていました。今は「部下の成長にコミットしたい」と、発言も変わってきたと感じます。こうした変化を、垣見さんはどう受け止めていますか?

昔のリーダーは、自分の背中を見て育って欲しいと。これはこれで重要なんですね。一人ひとりが自ら行動し、個として立つということも。ただ、時代の変化で、部下も多様化していますから、組織長がきめ細かく特徴やその人が置かれた状況を見ながら育成するということ、そして一人一人のチーム員のことを「自分事」として考えるということが、重要になってきています。実際、研修を受けたリーダーたちは、部下の状況を「自分事化」して考える習慣が身についた人が多いと感じます。そうした意識を持って部下を育てることで、結果的に組織力が高まっていくと私は考えています。

逆にミドルマネージャーよりも上のクラスのリーダーに上がっていこうと思えば、チーム員のことを「自分事化」して考える習慣が身についていないと、難しいのでしょうか?

難しいですね。リーダー本人が壁にぶつかると思います。上に行けば行くほど見える景色は変わってくるし、求められることも難しくなってきます。どのレイヤーにおいても求められる事を吸い上げ、ステップを踏んでクリアしていかないと、リーダーとしての成長に行き詰まります。そもそもミドルマネージャーって難しいんですよ。よくミドルマネージャーには「2つのジレンマ」があると言われますよね。上を目指すポジションであり自分自身も成長する必要がある一方で、下も育てなければならない。現場では既存のビジネスもしっかり回すということに加えて、新しいこともやれやれと言われます。特に弊社は、少数精鋭で非常に少ない人材で経営をしていますので、プレーヤーとして動き回っており、どうしても部下への目配せが疎かになりがちです。結果として部下を育てることができていないという構図になっています。

2nd seasonも継続して導入しようと決めてくださった理由は?

「本番」は、あくまでも現場の日々の業務の中にあるんだよと。TBLはそこのところのコンセプトが明確なところを評価しています。「本番」に挑むための覚悟とスキルを身につけるための集合トレーニングも行われていますし。

そうですね。TBLでは、「現場で使える本物のマネジメントスキル」を学ぶため、月1回の集合トレーニング「Locker Room」を実施して、自分自身に問いかけるワークや、チーム内での議論に取り組んでもらいます。アウトプットの場数を踏んでもらうということですね。

繰り返しの実践にこそ意味があり、継続の価値はあるなと判断しました。

「フォロワーシップ」のあるリーダーが求められている

商社の世界では、10年前と今とでは、求められるリーダー像に変化はありますか?

基本は同じと思っています。例えば、ビジネス感度を常に意識する必要があるとか、最後までやり切ることが求められるとか、あるいはコミュニケーションをしっかり取れる人物であってほしいとか。ただし、リーダーシップのスタイルは、多様化してきているなとは感じます。以前は、商社と言うと世界を飛び回って厳しい環境下にも行きますから、「強いリーダー」というのが典型的なパターンとしてあったわけですね。今は時代のスピードも速いですから、強いリーダーだけでは駄目で、「フォロワーシップ」のあるリーダーも必要とされるようになったと感じます。特に、女性がリーダー層にも増えてきていますし、キャリアに対する考え方も変わってきており、人材も流動化しています。ワンパターンでは通じなくなってきたことは確かですね。

チーム全員一人ひとりのスタイルを発揮してもらうために、一人ひとりに目を向け、その人の持ち味を毎日考え抜く、というようなリーダーのスキルとしての「フォロワーシップ」は、チームボックスの代表を務める中竹竜二が広めたいと考えている概念の一つです。実際、「フォロワーシップ」を発揮するリーダーというのは育ってきていますか?

はい。部下とのコミュニケーションをしっかり取りながら、部下の状況を把握し動けるリーダーは増えていますね。私はよく、課長さんをはじめ、組織長研修で問いかけるんです。「あなたは部下の何を分かっていますか?」と。名前はもちろん知っていますよね。では、下の名前を言えますか? 家族構成を知っていますか? お子さんがいる人ならば、お子さんにどんなスポーツをやらせているのかといった会話もしたことがありますか?と。別に、それは仕事上で必ずしも必要な情報ではないんです。ただ、組織として物事を進めようとしたとき、いろんな環境に置かれている社員がいますから、そういう瑣末な情報をも大事なこととしてリーダーが認識してコミュニケーションが図れているか否かで、指示の仕方も変わってきます。社員がいざ、という時にも難なく対応できます。そうした上下間、あるいは横の関係の良好なコミュニケーションの芽は、どんどん育てていきたいと考えています。

人事の仕事って、一朝一夕ではないと感じるんです。こういうリーダーを育成していきたい、ですとか、コミュニケーションが密な組織を応援していきたい、ですとか、社員の意識喚起を常に起こしていかなければならないところはありますよね?

はい。いろいろな人事施策がある中で、会社のカルチャー、風土まで変えていくんだという意識がないとうまくいきません。伊藤忠商事は160年もの間脈々と受け継がれてきた社風というのがあるんですよ。それを変えようとすると、並大抵のことはうまくいかなくて。例えば、働き方改革の一環で、朝型勤務を導入した時も、掛け声だけではうまくいかないのは分かっていましたから、「習慣」を作るための地道な実践を着々と実施していきました。会社の方針をしっかり伝えた上で、夜8時になったら全フロアの見回りを毎日やり続けるですとか。「習慣」として社員に定着するというところまで持っていくのが人事の役割だと思っています。染みついた会社のカルチャーを変えるには、そのぐらいの覚悟は必要です。制度とか仕組みを作ってスタートして、それでおしまいというのではダメなんですよね。リーダーの育成も同じですね。個々の意識が変わっていくためのプロセスを大事にしたいです。そのためにも、継続して学びと実践を繰り返す機会というのは、欠かせないと考えています。

文章:古川雅子 写真:柏谷 匠

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