――エームサービス様が、組織とリーダーの変化のために「Reborn Camp」を導入した理由をお聞かせください。
井上 敦詞 執行役員兼人財本部長(以下、井上):ちょうど、コロナ禍以降しばらく実施できていなかった部長・事業部長の研修を再開したいと思っていたところでした。部長同士がコミュニケーションを取る場やプロの講師からしっかり研修を受ける必要性も感じていました。そのタイミングで「Reborn Camp」の存在を知り、「Reborn Camp体験会」に参加してみました。体験会を通して感じたのは、「Reborn Camp」が軽井沢の大自然の中で行われるため、日常のビジネス環境から離れて自分自身を解放することは立場的にも滅多にそうしたことができない部長・事業部長メンバーにとって、刺激的な機会になるだろうという事でした。担当するビジネスも組織の規模も全く違い、なかなか横の繋がりを作るきっかけがなかった部長・事業部長が、皆が同じ前提条件で、同じフィールドで話ができる最高の機会になると直感し、導入を決めました。
瀬田 千恵子(以下、瀬田):そうですね。日常から離れた場所だからこそ、普段孤独に頑張り続けるリーダーが自分自身を解放できたことに影響を受けたリーダーたちは多かったと思います。井上さんが、今回参加されたリーダーの皆さんに解放してほしいと思ったことは何でしたか。
井上:常に何かにとらわれている状態ですね。例えば、何をしていても携帯を手放せないとか。実際に、今回のプログラムが始まって最初の1時間は、講師の方のお話を聞きながら、ついつい携帯を気にしている人もいました。ただ時間が経つにつれて、自然と研修に集中していたので、やはり非日常の場に身を置く効果は大きいと感じました。
瀬田:参加したリーダーの皆さんには、どのような変化を期待していましたか。
井上:これまで部長として積み上げてきた経験や自分の思考パターンを一度捨て去る「アンラーン(※)」ですね。中竹さんからは「脱学習」という言葉も教えていただき、固定化されたものを一度捨て去ることによって、トランスフォーメーションが起こるということも、非常に納得できました。
※アンラーン(脱学習)=これまで培ってきた成功体験や信念、慣れ親しんだ習慣を捨て去ること
瀬田:Reborn Campではトレーニングの最後に、このプログラムを通じて再定義したリーダーとしての哲学を踏まえ、明日からの組織の中で実践する「リーダーそれぞれのリーダーシップ」と「リーダー同士が横のつながりを活かしチームとなって発揮するリーダーシップ」を言語化し、焚き火の前で儀式のように宣言します。宣言をする際は、自分自身の目的のためにアンラーンするものを定義して捨て去らなければならないのですが、今回参加されたリーダーの皆さんは自分が捨て去る必要があるものを明確に言語化できていましたね。全体性で捉えるとすると、井上さんから見てエームサービスのリーダーの皆さんが「最もアンラーンしなければならないもの」は何だと感じましたか。
井上:過去の成功体験です。過去の成功体験にしがみついていると、せっかく新しい情報をインプットしても、結局その経験に頼って答えを出してしまいます。特に現場ありきの世界で管理職をしていると、十分な情報も時間もなく判断ができない状況であっても、メンバーに指示を出さなければいけないことも多く、自分の成功体験から培ったものを頼って判断してしまいがちです。変化するためには、まずはこの習慣を手放すことが重要だと思っています。
――Reborn Campのトレーニングを通じて、リーダーの皆さんにどのような変化が起こりましたか。
井上:自分の価値基準だけに頼らず、周りの意見にも耳を傾けながら行動できるようになりました。中竹さんがおっしゃった「リーダーの強さとは、自分の弱さをさらけ出すことから始まるんだ」という言葉で、彼らの捉え方や考え方に変化が起こったのだと思います。
瀬田:参加されたリーダーの中には、「部長なんだから、こうあるべき。こうでなければならない」という「べき論」にとらわれていた方もいらっしゃいましたね。このプログラムで物事の見方や捉え方に変化が起こったことを通じて、コンプライアンスという意味で「リーダーとして決してやってはいけないこと」と「心から自分がやりたいこと」の板挟みになり、良い意味で心に揺らぎが起こり、葛藤されているリーダーが多かった印象がありました。
井上:そうですね。業務上でも、リーダーに即断即決を求める場面が多いからかもしれません。ただ今回の「Reborn Camp」への参加を通じ、そのような状況の中であっても、一度立ち止まって周りの意見を聞いてからアクションすることができるようになったのではないかと感じています。
瀬田:確かに、プログラムが始まってすぐの頃の皆さんはあれこれ考えるよりもとにかくやってみるという傾向が強かったですね。段々と立ち止まって現状を見つめることや、なぜやっているのか目的に立ち返ることの重要性を理解していき、そのような変化が起きたのだと思います。この変化は、日常業務に戻った時にどのような場面で活かすことができますか。
井上:これまでエームサービスのリーダーに足りなかった「立ち止まって考えることや目的に立ち返ること」を習慣化することを通じて、「早く仕事を進めなければいけない」という考え方から「立ち止まって周りの意見に耳を傾けたり、一度目的に立ち返って考えてみると、これまでよりも良い解決方法を見つけ出せるかもしれない」という可能性を信じるマインドに変わっていけると思います。
瀬田:プログラムを受けていただいている中でとても印象的だったのが、講師の話を聞いている時のリーダーの皆さんのリアクション(反応)です。ただ頷くだけでなく、表情に現れたり、自然と声が出たり表現が豊かなんですよね。これはエームサービスのリーダーの皆さんならではの特徴ではないでしょうか。
井上:講師の皆さんの話が分かりやすく、自然に引きこまれていったからこその反応だったのだと思います。ただ、普段から反応が豊かで素直に受け取ることができるリーダーが多いのはエームサービスの特徴ですね。参加していた彼らの中でも、この研修はこれまで受けてきた研修という感じは一切無く、出てくる話の内容が新鮮でワクワクするという声が出ていました。エームサービスの部長・事業部長メンバーから「ワクワクする」という声を聞いたのは、私も初めての経験です。Reborn Campは、通常の研修とは異なり、日常とは離れて、軽井沢の大自然の中でこれまでにない体験をし、集中してたくさんの言語化を行います。「体験を経験に変える」ことを通じて、部長たちのこれまでの前提を覆すような学びを得ることができたのだと思います。
――アクティブラーニングでは、人間バックギャモン(※)が非常に印象的でした。リーダーの皆さんの様子を見て、どのように感じましたか。
井上:意外な人がリーダーシップを取っているのが印象的でした。なかでも、まだ部長職になって日が浅く、他のリーダーたちともあまり馴染みのないメンバーが、積極的に声を出してみんなをリードしようとしていて、これまでには見たことがない姿を見て正直びっくりしましたね。
※人間バックギャモン:Reborn Campで行うチームビルディングアクティビティのひとつ。
瀬田:後半、フラフープ(※)のアクティビティをやる頃には、良い意味で皆さんの力が抜けて、よりオープンに自己開示できるようになっていきました。その様子を見て井上さんは何を感じましたか。
井上:フラフープのワークでも、普段はそこまで目立ったリーダーシップを発揮するタイプではなかったリーダーが、周囲のみんなを率先して鼓舞していることに驚きました。人はシチュエーションが変わって普段はない刺激を得ると、元々持っている本人の良い部分が自然にあふれ出てくることもあるのだと、良く分かりました。
※フラフープ:Reborn Campで行うチームビルディングアクティビティのひとつ。
瀬田:1日目の後半、自己探求ワークの時間に入っていくと、そこからは、合宿の冒頭からそれまでの自分を時間軸とともに振り返り、普段は触れることがない自分の内側に向き合う時間でした。自分のポジションよりも一段上の組織の中核である経営を担うリーダーとしての視点で考えていただく時間もあったので、頭を悩ませて揺らぎや葛藤が起きやすい時間帯もありましたよね。あえて、そうした揺らぎや葛藤に向き合わせようとする中竹の話を聞いていて、リーダーの皆さんには何が響いていたと感じていましたか。
井上:「自分の弱さをさらけ出すこと」と「アンラーンしてできた余白に新しい情報をリラーンする」ことですね。リーダーも人間なので、当然弱さがありますし、過去の成功体験に基づいて判断を繰り返し、余裕がない思考回路で物事を前に進めようとしがちです。そういった中で、自分をさらけ出し、成功体験とは別の新しい情報をリラーンしなければ変容にはつながらないし、イノベーションも起きないという話を聞いて、腹落ちしました。
瀬田:中盤で「自分らしさ」や「オーセンティックリーダー」についての話が出たときには、リーダーの皆さんの心の中に迷いや葛藤が生じたように感じました。
井上:部長や事業部長は、普段もリーダーとして周りの従業員や部下の目線に立って考えることが多いので、「あなたらしさとは?」という直球の質問を受けたときに、初めて自分という存在に意識を向けることができたのだと思います。
瀬田:参加されている皆さんの中でも、特に普段はあまり自分の感情を出すことがない方が自分の感じたもやつきや違和感を言葉にして、全員の前で共有したシーンがとても印象的でした。
井上:「部下に自分の感情を出してはいけない」という考えに捉われて弱い部分を隠して、本当は言いたいことでも溜め込んでいる人は多いはずです。中竹さんの「感情をさらけ出してもいいんだよ」という言葉を聞いて、みんながこれまでのそうした思い込みから解放されたのだと思います。自分の感情をしっかり表現すれば相手にも伝わるし、自分が弱さをさらけ出せば相手にも伝わって、むしろチームで一緒に成長できるんだということを理解できたのだと思います。
瀬田:お互いから学び合う「コラーニング」もできていたように思います。エームサービスのリーダーの皆さんは、普段からこのような学び合いをしていますか。
井上:各部門内ではあったかもしれませんが、部長や事業部長がここまでさらけ出しあって議論する場面は、普段あまりないと思います。やはり、皆がこういう機会をものすごく欲していたことが、今回のキャンプに参加してよく分かりました。
瀬田:それが顕著に現れていたのが、焚き火の時間でしたね。皆さんが普段ではここまで話さない潜在的な部分まで深い話をされていたことと、最初はいくつかのグループに分かれて話をしていたのが、時間が経つにつれて、自然と大きな焚き火に集まってきて最後には全員で深く対話していたのがすごく印象的でした。これは過去のお客様を振り返ってもなかった事象です。
井上:焚き火を囲むというシチュエーションがもたらす力が素晴らしかったのだと思います。自然と皆が火の周りに集まって、これまで以上に横のつながりを強くすることができました。火の力にはそういう作用がありますね。顔がはっきりと見えないくらいの暗さも彼らにとってはちょうど良かったのだと思います。より自分をさらけ出しやすくなって、一人ひとり集まったメンバー全員の前で深い話ができました。
――2日目は、これまでの自分のOSをアップデートして、さらに一段上の経営リーダーとしての視座を得るための学びを中心に進めていきました。今回のテーマの「経営リーダーへのトランスフォーメーション」については、井上さんはどのように捉えていますか。
井上:エームサービスの組織文化を変えていくことももちろん大切ですが、今回参加したリーダーには、上位の経営メンバーに対しても、もっとフラットに意見を表明できる人財になってほしいと思っています。そうした人財になるためのきっかけとして、このReborn Campのトレーニングが活きてくると感じていました。
瀬田:そういう意味では、皆さんの物事の見方や捉え方が多面的になり、経営リーダーとして必要な一段上の視座を身につけていく変化があったと思いますが、このような変化を現場に戻ってからも、継続的に活かしていくことはできますか。
井上:できると思います。例えばコミュニケーションを取る場面でも、さまざまな角度から物事を捉えて、お互いに相手の考え方を尊重できるようになったことは、現場に戻ってからも自分のチームやメンバーに対して、もしくは上位の経営メンバーに対してもできることの一つです。
瀬田:アンラーンについて学んだときは、理想の経営リーダーになるために手放すものと、成し遂げていくものを分けて考え、選択することに迷ったかと思います。それでもなんとか全員が選択し、それぞれを自分の言葉で言語化することができました。この様子を見てどう感じましたか
井上:そもそも、それまで知らなかった「手放す」という選択を知ったことが彼らにとって大きな収穫だったのだと思います。今後、そのような選択を迫られる場面になった時、中竹さんがおっしゃった「白か黒かではなく、グレーでもいいんだよ」という言葉が活きてくると思います。
瀬田:意思決定という意味でも、変化に適応しながらアジャイルに物事を進め、失敗してもトライアンドエラーを繰り返しやっていくことを通じて、自然と目指すべき方向性が見えてくる。そうした方向性が見えて初めて堂々と意思決定できるということを学んでいただいたのではないでしょうか。
井上:トライアンドエラーを繰り返し、そこから学びを得て次に応用していくことに関しては、以前から少しずつリーダーたちの間にも浸透してきてはいました。しかし、そもそも失敗か成功かを判断するためには、自分で振り返って反省することが必要です。そういう意味も含めて「立ち止まる」ことの大切さをより意識させてもらえたと思います。
瀬田:最後の儀式でアンラーン宣言をする前に、中竹から「手放すものに対して感謝してほしい、そしてそれは皆さんを治癒する意味もある」というお話をさせていただきました。その影響もあってか、リーダーの皆さん全員が、必ず宣言する前に、これまでの自分自身に感謝を述べられていたのが非常に素晴らしいと思いました。
井上:ブランドコンセプトの「Touch your heart」が浸透しているからというのも1つですが、Reborn Campのトレーニングを通じ、それぞれの価値観の中で大事にすべきものと手放すべきものの整理をつけて、選択することができたという気持ちもあったのだと思います。
――Reborn Campをきっかけに起こり始めた経営リーダーへのトランスフォーメーションを、エームサービスの未来に向けてどのように活かしていきたいですか。
井上:今回参加したリーダーたちには、「Reborn Camp」で得た学びを、自分の後輩や部下に繋いでいってほしいです。学んだ事を仕事に活かすのはもちろんですが、学びを継続し、周りにも伝播していくことが非常に大事だと感じています。プログラムに参加したリーダーの変化を見て、他のリーダーたちにも、年齢や役職に関わらず学び続ければ、必ず成長できることを知ってほしいです。
瀬田:今回参加されたリーダーの皆さんは、周囲にも伝播し続ける力を十分にお持ちですよね。最後に「Reborn Camp」の導入を検討している企業様に向けて、ひと言お願いします。
井上:「Reborn Camp」は軽井沢の大自然の中で様々な体験をすることで、記憶に残るだけでなく、体験を経験に変えて、学びや成長に繋げられるプログラムです。企業によって抱えている課題は様々ですが、それぞれに適した成長や、独自の存在意義が自ずと見つかるプログラムなのではないかと思います。
瀬田:今回の「Reborn Camp」は、エームサービスの部長・事業部長の皆さんにとって、経営リーダーへのトランスフォーメーションが始まるきっかけとなりました。大切なのはこのきっかけを継続してさらに進化させていくことです。ここからの進化を心から願っています。そして引き続きサポートさせてください。本日はありがとうございました!