水野 雅義社長(以下、水野社長): 私の父である先代の会長が亡くなった直後の話になりますが、社員が仕事のミスを隠すことで問題が大きくなるタイプのトラブルが社内で頻発していました。以前の当社であればトップである父が社員を一喝して終わらせていたと思いますが、それでは同じことが繰り返されるだけのような気がしたので、その当時から「何かを変えなければならない」と感じていました。
また、当時の当社はリーマンショックの影響による世の中の内食志向の高まりを受け、売上・利益共に絶好調でした。正直な話、いい時は何をやっても上手くいくものですが、会社の業績が落ちてくるとそうは行きません。私は社員に対して「自分たちで考えてみなさい」と自走を促すタイプですが、業績が落ち込んだ時に社員たち自身が自分で考えて状況を打開できるような組織にはなっていませんでした。そこに関しても何かを変えていく必要を感じていたのです。
そんな時にチームボックスさんのトレーニングの話を伺い、中竹さんとお会いしたのです。中竹さんのフォロワーシップに関する考え方をお聞きして「まさにその通りだな」と共感できたほか、カリスマ経営者である父の後を継いだ私と清宮克幸監督の後を継いで早大ラグビー蹴球部の監督となった中竹さんの境遇が似ていたんですよね(笑)。そのような意味でも当社を社外から変えてくれる適任者だなと思い、まずは特に多くの課題を抱えていた営業部門からTeambox LEAGUEを導入させていただきました。
水野社長: 現在は国内の労働人口減少もあり、多くの企業が人材確保に苦労している状況です。そうした中でも「ホクトで働いてみたい」「ホクトで働き続けたい」と思ってもらえるような環境を作っていかなければなりません。以前のようなトップダウン型の社風、上司や先輩の言うことさえ聞いていればOKという環境では、誰にも魅力を感じてもらえませんからね(笑)。そのような組織文化を変えるきっかけを与えてくれるのがTeambox LEAGUEのトレーニングであると考えています。
先ほどもお話しした通り、今までの当社には「上長の指示は絶対的なものである」という雰囲気がありました。Teambox LEAGUEのトレーニングを浸透させることにより、リーダーが一人ですべてを決める環境ではなく、リーダーが旗振り役として指針を示しながらも、部下であるメンバーたちと話し合いながら方向性を決めていけるような文化が醸成されることを期待しています。
水野社長: 私は当社をもっとフラットな組織にしたいと考えています。新入社員と入社20年目のベテランであっても対等な立場で話し合い、目の前の課題や問題に対処していけるような組織が理想です。そのためには新入社員や異動者が新しい部門・組織に溶け込みやすいような環境が必要になると考えています。
そのような環境を作る際に重要になるのがアンラーンだと思います。あらゆる社員が溶け込みやすい組織・環境を作るには、固定観念だけで人を見るのではなく、一人ひとりがまっさらな気持ちで人に接していくことが大切になるからです。私の印象ですが、当社の社員は決して視野が広い人間の集まりではありません。アンラーンのような考え方を根付かせることで、今までは前方180度しか見えていなかった視野を、10度でも20度でも広げてほしいと期待しています。
水野社長: 当社にはプライドが高い人間も多いので、「さらけ出し」を苦手にしている社員も多かったのではないでしょうか。たとえば部署異動をして新しい仕事にチャレンジする際にも、自分一人で解決しようと考えてしまうタイプです。わからないことがあれば一言「教えてください」と質問すれば済みますし、専門家に頼ることもできるんですけどね。
ただ、少しずつではありますが、プライドを捨ててフラットなコミュニケーションを取れるリーダーが増えてきた印象もあります。最初のうちは「なんでこんなことをやらなきゃいけないの?」と言っているリーダーも少なくありませんでしたが、一人ずつでもそんなフラットなリーダーが増えていけば、この会社も変わるだろうと思います。
水野社長: 生産現場の社員は特に素直ですからね。素直で真面目な分だけ「今のやり方はこれで決まっているから」となると、それ以外のやり方に考えが及ばなくなってしまう社員が多いのです。
その中でも「変わらなければ」という気持ちを持っているリーダーには変化が見られますし、一方では切り替えに苦労しているリーダもいます。人によってある程度の差が出るのは仕方のないことですが、社内でも変化するリーダーと変化しないリーダーの評判が明確に変わってきたりもするので、変化に躊躇しているリーダーは、変わっていく同僚たちの姿を意識しながら頑張ってほしいと思っています。
そのような感じで現職のリーダーたちが次第に変わっていけば、将来リーダーのポジションを受け継ぐメンバーたちも「自分もこうならなければ」と考えるようになるはずです。こうしたサイクルで新しい考え方を身に付けたリーダーが会社の中に増えていけば、会社組織そのものが大きく変化していくでしょうね。もちろん、そこに到達するにはある程度の時間がかかることも承知しています。
水野社長: いえいえ、全然得意ではありません。ある役員からは「社長は瞬間湯沸かし器ですよね」と言われたことがあるほどです(笑)。あれこれと口を出さずに辛抱するというのは、私が意識的に取り組み続けていることの一つです。
実際、このトレーニングをスタートする際に「まずは社長である私自身が変わる必要がある」と感じたのです。また、横から何か言いたくなったとしても、それを口にしてしまうと真摯な姿勢でTeambox LEAGUEに取り組んでいるメンバーたちに対しても失礼になりますからね。トレーニング以外のことに関しても、営業には営業本部長がいますし、生産には生産本部長がいます。基本的には彼らに任せていますし、何か忠告が必要な際にも「何でこうなっているんだ?」といった否定からはいるような言い方だけはしないように心掛けています。
水野社長: 一言で言えば、組織を変えるきっかけや、私やリーダー陣の考え方を変えるきっかけを作っていただいていると感じます。あくまでも実際に変わる・変えるのは当社自身ですからね。
トレーニングを始めて以降、当社のリーダーたちが、チームボックスさんの「『わかる』から『できる』へ」とか、「リーダーが変われば組織が変わる」という言葉を素直に口にするようになりました。その言葉はリーダーたちを通して部下であるメンバーに伝わり、会社全体に浸透してきていると感じますし、これから入ってくる新入社員たちにも伝わっていくはずです。そのような循環を通して少しずつ会社の組織文化が変わっていくのでしょうね。