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成長実感こそが『働きがい』を生み出す原動力――伊藤忠丸紅鉄鋼 塔下社長インタビュー

成長実感こそが『働きがい』を生み出す原動力――伊藤忠丸紅鉄鋼 塔下社長インタビュー

対談 2021.01.05

成長実感こそが『働きがい』を生み出す原動力――伊藤忠丸紅鉄鋼 塔下社長インタビュー

2019年度よりTeambox LEAGUEを導入いただいている伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社様。
2020年度のプログラムが11月よりスタートしましたが、それに先立って当社代表取締役・中竹竜二がこのプログラムのテーマでもある「働きがい」について塔下辰彦社長にお話を伺いました。

本当の「社員によし」は問いから生まれる

中竹:今日は大きく2つお聞きしたいことがあります。一つ目は塔下社長が、今後、伊藤忠丸紅鉄鋼をどのような組織にしていきたいか。御社が掲げている「三方+1によし」を掘り下げていきたいと思います。次に、今年度のリーダー育成プログラム「Teambox LEAGUE」が始まりますが、参加するリーダーへの期待やメッセージも合わせてお聞きしたいと思っています。
まずは、「三方よし」に「+1」として「社員によし」を掲げた意図をお聞かせください。

塔下:もともと近江出身の会社であることもあり、「三方よし」は常に当社のフィロソフィーとしてありましたが、2015年頃、当社は「三方よし」に「社員によし」を追加しました。
当時、働き方改革に取り組む中で、経営陣でも、社員にとっての「働きがい・やりがい」とは何かを議論していましたが、「働きがい・やりがいは一律ではなく、人によって異なる」という認識でした。

会社と社員一人ひとりが常にコミュニケーションを取って、それぞれにカスタマイズされたテーラーメードの「働きがい・やりがい」を見つけていこう、というものであり、会社と社員とでしっかりとしたコミュニケーションを取った結果が、個人の「働きがい・やりがい」につながっていくという考えです。その考えは今も基本的には変わっていません。

しかし、当時は経営層の想いを前面に出して、社員を引っ張っていくようなスタイルでしたが、私が社長に就任して、社員に問いかけるスタイルに変えています。「『社員によし』って何だっけ?」と改めて問いかけるようにしています。

働き方改革において、「社員にとって良い制度」と思えるものは、これまでも都度整えてきました。しかし「社員によし」で本当に伝えたいことって何だろう?その答えがわかっていないのに、制度ばかりたくさん作っても本質を見失っています。制度を作ることが目的ではありません。当社で働いている社員が本当に求めているものと制度が合致していないと会社全体としてのパフォーマンスは上がっていきません。だからもう一度みんなで考えてみようよ、ということを私は常々言っています。

歴代の経営陣も、フラットな組織であることを常に意識してきましたし、オープンマインドで風通しの良い会社にしたいと思ってきました。社員が気持ちよく働けるのであれば、できる限り制度も環境も整えたいという想いは、今もこれまでもずっと変わっていません。しかし、それが社員のパフォーマンス、そして会社全体の生産性や成長につながっていないのであればやっている意味がないですよね。社員のためにやっていることと会社の成長が本当に一致しているのか。こういったことも常に問いかけています。

中竹:「社員によし」の上位概念を再構築しているわけですね。

塔下:当社が設立された当初は「二つの異なる会社を一つにする」という緊張感もあり、Unity、まずは団結することが一番の目標でした。その後、業績も伸びてきて、当初のプランよりも超過達成することができました。そこで、設立10年目のタイミングには、今後はどのように成長していくかを『夢を語ろう、10年後のMISI※』と称して、社内で議論しました。その時は「もっと事業を拡大しよう、さらなる成長をしていこう」と数値目標で夢を語る部分もありました。
MISI=伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社の略称)

しかし、その後、世の中は大きく変わって、産業構造そのものも変化してきました。今までの延長線上には答えが出なくなってきています。今まで「How」を問われていたものも、「What」が問われるようになってきました。次世代の人たちはそれを考えながらやっていかないといけないですよね。だから我々は、社員一人ひとりが自律的に考えて行動して、その総和として会社の方向性を決めていく、そうして一つになっていくのが良いと思っています。自分たちのオリジナリティ、価値は何なのか?というのをもう一度自分たちで考えないと一つにはなれないというのが私の考えです。様々な施策も「自分たちで考える」というような方向に持っていきたいと思っています。

中竹:お話を伺って、非常に本質的だなと感じています。経営者はどうしても答えを出しがちになってしまうのですが、塔下社長は「答え」ではなく、「問い」を出し続けています。

今まで、多くの経営者は「答え」を出すマネジメントをしてきましたが、このやり方には限界がきています。塔下社長の言うように「みんなの働きがいって何?」と問いかけるマネジメントをしているのは非常に素晴らしいと感じました。

人間は問いかけられると考え始めるので、今まで考えていなかったようなことも考えるきっかけになりますよね。「やりがい」や「働きがい」って、それが大事だというのは理解していても、問いかけられることで、社員にとって何が本当にいいんだろう?と考え始めます。社長が本質的な問いをし続けているというのは興味深いですね。

塔下:会社の成果が自分のやりがいだと思い込んでいた時代もあったでしょうし、生活の質の向上に直結していたでしょうから、実際にその通りだったかもしれません。でも、今はそうではなくなってきました。これから更に変わっていくでしょう。

これまでOJTを中心とした人材育成をしてきましたが、自分の過去の経験から次世代の人に教えていくことは難しいですよね。当社の社員の良いところに「労を惜しまない」という特徴があります。お客様が困っていることに関して、とにかく解決しようとものすごく一生懸命に取り組んできており、それで現在の当社があると思っています。これは高度経済成長の中で培ってきた良い面です。

私たちは「ソリューションプロバイダー」という言葉を使っていますが、お客様から「こんな困りごとがあるんだけど・・・」と言われると適切なソリューションを提供しようと努力します。しかし、お客様からお困りごとが提示されないと、次の課題がわからなくなってきます。そのような際には、お客様の為になることは何かと、仮説立てて提案し、一緒に解決策を考えていく時代になると思っています。そうすると、今までのように「労を惜しまない良い社員」というだけでは次のフェーズに行くことが難しいですよね。これは当社だけではなく、日本全体が抱えている課題だと思いますが、徐々に変えていく必要があると感じています。

中竹:これまでは、現場で信頼を構築しながら、お困りごとを解決するというのをOJTの中で実際に見て学ぶというのが機能していたんでしょうね。

塔下:これまでを否定しているわけではないですし、当社のパワーの源泉はここにあると思っています。人はやることが決まっているとやりやすいですよね。一番の不安は何が起こっているかわからないこと。わかってしまえば覚悟もできるし、選択肢も自ずと見えてきます。そこから最善のケース・最悪のケースのシナリオを想定して、事前に準備もできます。なかなかシナリオ通りにいかないから痛い目に合うこともありますが(笑) 。何かをDecisionするときに、何が起こっているか「わからない」というのは非常に決断を難しくさせます。

中竹:最近はDX(デジタル・トランスフォーメーション)が進むにつれて、人間の課題解決能力もどんどん進化していますし、そこにはAIの力も追い風となっています。その中で、これから大事になっていくのは課題を特定する能力です。課題の特定は、課題の解決より一段上のスキルで、多くの人は「何が課題かわからない」という状況に陥ります。課題は目に見えませんので、「これを課題だ」と特定するのには、勇気も必要です。
もちろんスキルを増やしていくことも大切ですが、これからは視座を上げることや、自らでやっていることへの価値を見出すなど、精神的なスキルも必要になってくるでしょう。そういう意味でも、盲目的に働くよりも、社員一人ひとりが「そもそも働きがいってなんだろう?」と考えることは課題を特定する能力を養う上でも大事ですよね。

成長は他者との関係性の中で共感し、実感する

塔下:スポーツの世界もそうですが、誰しも強くなりたい、上手くなりたいと思うけれども、なかなかそううまくはいきません。自分のスキルを上げるために本当に今この練習に全力を出しているか?と自分自身に問いかけながらやっていても、長時間集中は続かないし、自分の想いと、実際にやっていることがマッチしている時間はとても短い。そして成長できたと実感できる時間はもっと短い。でも、その実感がないと、もう一歩先に行くエネルギーにならないですよね。この「成長実感」のサイクルが回り始めると、どんどん伸びていきますし、もしかすると「成長実感」によって、まだあまりパフォーマンスを発揮できていなかった人でも、急に成長することもある。それはスポーツの世界でも一緒ですよね?

中竹:そうですね。

塔下:社員には「成長実感」をして欲しいと思っています。成長を実感することがパフォーマンスを向上させるということがわかったら、それこそがその人の「働きがい」であると僕は思っています。

中竹:成長を実感すると人間は次のフェーズに行けます。
成長と成功って言葉でいうと似ているのですが、成功は目標と紐づいているので実感と直結します。売上を達成したとか、賞を獲ったとかですね。でも、成長って曖昧で、人によって軸も違うので、本人が成長していても実感できていないというケースもあります。
今までの人材育成の手法だと、一人でもがいて、実際には成長しているのに本人は実感できていなかったというケースが多くありました。ですが「働きがい」の答えが自分たちの中で見つかって、成長実感が会社の中で醸成されていけば、次のステージに進む大きな手掛かりになると思いますね。

塔下:今、このコロナ禍で、なんとなく歯痒さやもどかしさを感じますよね。

中竹:顔を合わせて一緒に働けないケースもありますね。

塔下:どうしたらいいのだろうと思っています。みんな勉強熱心ですし、今は本でもインターネット上にも、情報はたくさん溢れています。経営に関する知識や、仕事のスキルはいくらでも学ぶことができます。しかし、理念や想いは、自分の実感として感覚的に腹落ちしないと、心から共感できないですよね。頭でわかるだけじゃなくて、心で感じること。そのためにはやはり、トレーニングを繰り返すことと周囲と目線を合わせて確認していく作業が必要なのだろうと考えています。

中竹:そうですね。成長を実感するのは一人じゃ難しくて、人との関係性の中で生まれていくものです。そういう意味でいうと、会社の中ではどんな人がキーマンとなって現場に成長を感じさせられていくといいですか?

塔下:やはり自分自身がそういった経験をした人が、他の人にも同じような影響を与えられるのではないでしょうか。社内でもディスカッションを重ねて、価値観を共有していきたいですね。

中竹:共感は実感につながっていきますね。

塔下:当社は、もともと二つの異なる会社が統合して誕生したので、是とするものも違ったかもしれません。それを少しずつ統一してきましたが、まだ完全ではないと思っています。それでも、違った企業風土を持つ会社同士が、それぞれの想いに共感することで一つになろうとしてきました。これから先は、次のステージにいく段階です。今一度「我々の価値観ってなんだろう?」と問い直すことで言語化し、共有していきたいです。

おそらく、その段階でリーダーたちも悩むと思いますが、悩みながらも問い続けていって欲しい。それが個々人の自律につながると思っています。自分で律して動いていく。そういう組織になって欲しいですね。

中竹:コロナ禍でリモートワークも増え、孤独を感じる人も増えています。そんな中でも、自分で考え動き、お互い共感し合える人たちとつながっていくというのはまさに成長につながっていくのではないでしょうか。

塔下:会社にもたくさんの人はいますが、いつも同じように知っている人たちとつながりあってるということにはなりません。自分の心の声を共有する機会は多くはないですが、一人でも二人でも心から話ができる人が増えると良いと思っています。小さなつながりが、やがて大きなつながりになっていく。そんなイメージです。

 

「社員によし」を推進していくのは現場のリーダー

中竹:やはり「社員によし」というのは大上段に制度があるというよりも、一人ひとりの小さなつながりから、本当に大切なものを生み出していくというイメージですね。

塔下:もともと「三方よし」が一つの完成された考え方としてありました。売り手によし、買い手によし、世間によし。でもそれは、結局は巡り巡って自分にも良いことなのだろうと私は理解しています。従って、「社員によし」も、もしかすると「三方よし」の一部なのかもしれません。ですが、あえて「+1」と強調する事で、より理解されやすくなったと思っています。

中竹:色々な制度や施策もありますが、やはり「社員によし」を一番推進していくには、現場にいるリーダーが肝になっていくのでしょうね。社員一人ひとりにカスタマイズされた、自分たちの「働きがい」を生み出していく。

塔下:そうですね。リーダーも唯一の正解を持っているわけではないですし、実際に仕事の反復の中で確信を掴んでいくのでしょう。

中竹:社長がやっているような問いかけですね。

塔下:人に問いかけているときって、半分くらいは自分にも問いかけていますよね。私も8割くらいはそうかもしれません(笑)。世の中の経営者の皆さんも、きっと確信を持っているわけではなくて、正解を探して問いかけているのだと思います。

中竹:原点はやはり「三方よし」の中にあるのでしょうね。「社員によし」も内包された考えだったと。それと同じように、答えを最初から出すのではなく、常に問いかけ続けながら社員一人ひとりに働きがいを考えてもらうというような方向性ですかね。

塔下:「正解はこれだ」と断言できる名経営者もたくさんいらっしゃいますが、私はそういう器ではありません。みんなが考えることが大事です。今まであまり考えていなかった人が、考え始めるようになることに価値があると思っています。それが形になっていくのであれば、さらにベターですよね。

中竹:非常に共感しますね。私も色々なスポーツチームを見てきましたが、基本的には問いかけ続けただけです。考えていなかったことを考えるようになるというプロセスでチームを作ってきました。チームボックスのプログラムもそれに近いです。「リーダーはこうあるべきだ」「リーダーなのだから、こうしてください」ではなく、常に問いかけ続けています。社長のアプローチと似ていますし、親和性がありそうですね。

塔下:問いかけにもスキルが必要だと思いますので、プログラムを通じて学んで欲しいですね。

中竹:「伝え方」や「問いかけ方」というのはプログラムの中でも重要なキーワードです。

塔下:私も失敗したなと思ったことはたくさんありますし、先輩方に反発してきたことも多々ありますね。

中竹:そういって失敗を失敗と認められるのは素敵ですね。人は都合の悪いことはどんどん忘れていくので(笑)。

塔下:都合の悪いことを忘れないと、次に進めないというのもありますけどね(笑)。
でも、いつどんな時も常に素晴らしい人っていないと思っています。同じ人の中にも、良い側面と悪い側面があって、常にどちらかが出ているというわけでもない。だからこそ、自分のパフォーマンスに良い側面がずっと出せるようになれば良いですよね。

さらに組織はそういった一人ひとりのパフォーマンスの総和だと思うので、みんながそれを理解して、一人でも多くの人が良いパフォーマンスを出せるよう考えてくれると良いなと思っています。

中竹:俯瞰した目が求められますね。良いところも悪いところも俯瞰して捉えられるような

塔下:そうですね。リーダーには自分をしっかり持っていて欲しいなと思っています。

Teambox LEAGUEへ参加する17名のリーダーへ

中竹:ちょうど今年のプログラムがスタートしたばかりです。今回は17名が参加していますが、実際に業務と並行して行うにはハードなトレーニングです。ぜひリーダーへの期待やこのトレーニングに参加するやりがいを社長からメッセージとしていただけると。

塔下:誰しも、自分の嫌な部分や、触れられたくない部分を持っています。そういった部分も含めて自分を見つめ直すトレーニングなので、私自身も今このトレーニングを受けるのは嫌かもしれない(笑)。でも、これは自分が変われる、さらに成長できる大きなチャンスであり、これまでとは違った自分になれるとても貴重な良い機会ととらえて、ぜひポジティブにトレーニングに取り組んで欲しいです。人はなかなか変われないものですし、自分の殻を破るには結構なエネルギーが必要ですが、このトレーニングがそのきっかけになると考えています。

中竹さんは多くのスポーツ選手の指導もしてきたと思いますが、スポーツ選手もきっと毎日練習を重ねる中で、何かきっかけがあった時に大きく変わるのでしょうね。自分の心の持ちようなのかもしれません。今回のプログラムが、参加者にとって、そのようなきっかけになることを期待しています。

中竹:誰しも自分と向き合うのは辛いです。でも、この辛いということを理解してもらえると人は頑張れます。そこを社長に共感していただけたのは非常に嬉しいです。

人の成長って機会を与えてもらうとか、きっかけがあるとより頑張れると思います。自分一人では行けないようなちょっと心地悪い状態の中で、他の人の支援を受けながらも、仲間と一緒に向き合う。社長も理解してくださっていますし、少し勇気を持って踏み出してみる。

我々の役割は、そうした頑張っている人たちに成長実感を持ってもらうことです。「あなたはこんな成長をしましたよ」というのを皆さんに感じていただきたい。さっき社長が仰ったように一部のリーダーだけだと、なかなか全体は変わりませんので、ぜひ全社的に導入していただけると(笑)

塔下:会社としては、成長機会・変われる機会を提供していくことを社員に約束していますので、そこは私の責任としてこれからも確保していきます。

おそらく今後も、時には失敗もするでしょう。でも、「社員によし」の考え方で言うと、それを会社として許容できる雰囲気、風土や文化を作らないといけないと思っています。もちろん規律や規範がなくなるような緩さを許容するということではないので、作り方のバランスは難しいですが。今回参加するリーダーたちには、そういった許容する会社の雰囲気をどう創っていくかについても、考えて欲しいですね。

中竹:ぜひその問いを色々な方と共有して欲しいですね。文化を変えていきたいと仰いましたが、文化には正解がないですから。社長自ら「考え続ける」というのを常にやっていらっしゃると思いますが、我々もそういった「考える」「問う」というような文化を創るお手伝いができればと思っています。

塔下:プログラムを通じて教えていただくことを、リーダーがどれだけものにできるかですね。
すでに昨年参加したリーダーたちが助けてくれるかもしれないですよね。彼らが新たに受けるリーダーの理解者になっていって欲しいですね。

中竹:期待したいですね。
今日はお話しを伺って、たくさん共感するポイントがありました。

塔下:当社が今後もこの業界で生き残っていくためにも、社員一人ひとりがそれぞれ一皮剥けていかないといけない。その指摘が、社員にとっての「生きがい」や「働きがい」につながっていくと思っています。その結果として、会社が一定の業績を残せれば、さらに良いですよね。

 

 

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リーダー育成・トレーニングは、
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